グランディアと私 最終回



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投稿者: 年貢 @ pppb7e0.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/1/21 13:05:33


グランディアと私

最終回 「RPGに内容は必要か」

(グランディアをクリアしてからお読み下さい)

























「SSに超大作RPG登場」の報に、皆が歓喜し、様々な期待を寄せた。
フルポリゴンの背景を2Dのキャラが動き回る・・・僕もまた、期待した。
何しろゲームアーツ(以下GA)を知らなかったのだ。当然ルナのルの字も知らない。
一体、どんなメーカーなんだ?
このBBSで聞くところによると、どうやら職人集団らしかった。
評判は良く、誰もが口をそろえてGAの事を褒め称えていた。
僕はますます期待した。「きっと、今度こそとてつもなく凄いRPGに違いない」と。
全く知らないメーカーの作る謎のRPG。無限の妄想が広がっていった。
キャラは立ってるだろう...ストーリーは超面白いだろう...曲も最高だろう...
ちょうどその頃FF7を終えて精神的にやられていた時期だったせいか、過剰、
いや異常と言ってもいい程それに期待する事によって立ち直ろうとしていた。
ともかく、そのRPGとは言うまでもなくグランディアの事である。

そんなある日の事だ。このBBSでとんでもない書き込みを見つけた。
確か「ジャスティンの声優が...」とか書いてあったと思う。僕は超驚愕した。
目は点になり、口は0の字に広がり、体、いや時間が止まったように思われた。
「グランディアって・・・しゃべるの・・・!?」
まさに「聞いていない」である。僕は愕然とすると同時にガックリきてしまった。
嫌な予感がした。
しゃべるRPG・・・なんだかその時点でグランディアの大体を読めてしまった。
グランディアプレリュードをプレイした時、その不安は確信に変わり、
本編をプレイし終えた時、グランディア支持派との深すぎるギャップに苦悩し、
もう少し歩み寄ろうと体に鞭打ちSS版ルナをクリアした時、余計悩んだ。
別に、グランディアの程度が低いとか欺瞞に満ちてるとか技術が先行してるとか
あまりに無内容だとか音楽が手抜きだとか、そういうことではない。
「自分の考えていたRPGとは全く違っていた」からだ。

僕の考えるRPGとは、「物語」である。
映画や漫画や小説のような、「一度限りのお話」と考えてもらってもいい。
それはある意味、ゲームではない。しかしそれでも僕はRPGを物語と考える。
バトルが面白ければ何度もやるだろうし(そもそもRPG自体ゲーム性が薄い)、
何より「RPGだけにしかできない表現」というのがあるのだ。
話を戻そう。
では一体、どういう物語の事を指すのだろうか。
それは、「何でもいい」のだ。長くても短くても、何でもいい。極端な話、
女の子がおつかいに行って帰ってくる、というだけの話でも構わない。
世界を救う話でありながら内容がスカスカの駄作は圧縮してあまりある。
肝心なのは、面白さだ。
面白いという事は、それだけの内容があるという事だ。都合でキャラが動かない。
なぜ女の子がおつかいに行かねばならなかったか、彼女はどう受け止めているか、
何を買うのか、時代はいつなのか、そこはどんな土地なのか、徒歩なのか遠出なのか、
そうまでして彼女が行くのはどんな背景なのか・・・考える事はいくらでもある。
そして忘れてはならないのが「主題」である。
女の子がおつかいに行く話を選んだからには、その話でしか訴える事のできない
作者の切実な気持ちがある筈だ。それが伝わってこないような物語は、嘘だ。
そして主題が納得できる内容と理由を持っていれば、どんどん物語は面白くなる。

ただ困った事に、RPGにもRPGなりの「見せ方」というものがある。
これを失敗すれば、主人公にどんなに高尚な冒険心があろうと、見る者にとっては
「え?何がどうなってるの?」「なーんかヘンだなぁ」という事になってしまう。
いい例が、「メディアを超えた移植作」というやつである。
漫画では面白かったのにアニメになった途端につまらなくなったなどという話は
ありすぎてほとんど美学と化している。その逆や、別パターンも同様である。
勿論、例外もあるが。(例えばアニメと漫画で同時に始まる類など)

で、もう一つが「メディアをまたいだ作品」だ。
グランディアは、言うまでもなく「アニメ」+「RPG」である。
とちらもれっきとした、純然たるメディアである。
しかし、それらを融合してしまうのは間違いではないだろうか?
しゃべったりしゃべらなかったりするのは、やはりどう考えても変なのだ。
ムービー挿入や音楽の止まるタイミング一つだって、バカにできない大事な事なのだ。
(断っておく必要もないと思うが)僕はアニメが嫌いで言っているのではない。
むしろあの絵は大好きだ。部屋中にポスターやタペストリも飾ってある。
しかしそれでも、アニメとRPGは合わない、と言いたい。
僕は、お寿司が大好きだ。ラーメンも大好きだ。ヨーグルトも大好きだ。
しかし、それらを同時に食べようとは思わない。まずくなる。

あかほりさとるに始まった(かどうかは知らないが)あのネアカで軽薄なノリを
ゲームに持ち込んでゲンナリというのがサクラ大戦の印象だった。楽しかったけど。
グランディアは違う。もっとタチが悪い。
アニメの手法をRPGに持ち込んだ結果、互いの間で拒絶反応を起こし
アニメとしてもRPGとしても中途半端な出来になってしまった。
企画者はやけに純粋なのでそんな事は微塵も気付かない。というより、
そもそもグランディアはそういう次元を目指したRPGなのだ。
OPデモの音楽が全てを物語っている。あれは、まさにTVアニメだ。
(イース2ほどまでとは言わないけど、もう少しマシな曲は作れなかったものか)
「多様化しすぎて閉塞したRPGの世界には、今こそ純粋な冒険が必要なのです」
きっと企画書には、こんな事が書かれているのかも知れない。
冒険とは、言わば非日常である。しかし全ての人間は日常からは逃れられない。
日常に対する非日常、そして好奇心とは何かを深く掘り下げる、それを
グランディアのテーマとして欲しかったのだが...せめて、ジャスティンが
「光翼人の力を使わずにガイアを倒す道を見つけてみせる、自分は冒険者だから」
くらいの事を言っておけばまだ格好がついたろうが・・・。

問題は、グランディアの「表現手段の欠陥」に目をつぶってしまう人がいる事だ。
まぁ主人公が単純に冒険を求めて旅立つという事には異論はないし共感できるが、
そういう問題なのだろうか?序盤はともかく徐々に内容が粗くなっている事を
無視して「感動」できるのであろうか?完全にゲームと一体化プレイしていれば、
一個所でもミスを見つければ即座に興ざめして感動どころではないと思うのですが。
やはり賢い大人は、冷めてプレイしているのかも知れない。
だが、あの今世紀最後の名作ラピュタと一緒にしてしまうのはどうか。
いくらなんでも「そりゃあんまりだ」である。あまりに違うものを一緒にしては
まだどちらかを体験していない人々が混乱すると思う。いや何より、
「圧倒的な違い」を気付かない(ふり?)人々はあまりにクールすぎると思う。
そういう人に、面白いRPGを作る事はできないのではないだろうか。

だが昔、非常に考えさせる書き込みを見た事がある。たしか、
「RPGにストーリーは必要ない。自分の通った道がストーリーとして残ればいい」
...というような内容だった。深い。深すぎる。それに、それこそがゲームだろう。
残念ながら、誰の書き込みか忘れてしまったが、忘れられない言葉です。

果たして、RPGに内容は必要なのか・・・?
少なくとも「中途半端な内容は必要ない」というのが今の自分の意見であります。
グランディア、素晴らしいシーンもあっただけに実に惜しいゲームでした。

P.S.
しかし最近思うのです。全ての人々がRPGを作る必要はあるのだろうか?...と。