ハードボイルド大戦(長文)/第二章



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投稿者: VR @ 202.237.42.72 on 97/11/28 17:53:08

In Reply to: ハードボイルド大戦(長文)/第一章

posted by VR @ 202.237.42.72 on 97/11/28 17:50:48



 地下に着いたあたりで、その少女はようやく口を開いた。

「……ご免なさい。変な事に、巻き込んでしまって……。」
「おっとお嬢さん、まだ名前も聞いてなかったな?」
「……すみれ、と申します。」
「じゃあ、すみれくん。質問の続きだ。何故君は命を狙われる?」
「…………。」
「心当たりがないのかい?それじゃあ君の身体が目当ての
変態野郎か、身代金をせしめようとしている悪人か、どのみち
ロクな連中じゃないぜ。」

 ……少女は口をつぐんだままだ。

「対面ビルからのマシンガン……。見上げる角度ですし、
殺すのが目的ではなかった様ですね。」
「案外、ハイツの大家が家賃の滞納者を追い出そうとした
だけかもな。年の瀬も近い事だし。」
「真面目に考えて下さいよ、大神さん!相手はすぐ向いの
ビルにいるんですよ?このままじゃ、いずれ……。」

 とんでもない依頼が舞い込んじまった。しかも、まだ
O.K.サインを出さないうちに、トラブルのまっただ中とは。

 確かにマリアの言う通りだ。地下に潜んでいたんじゃ、
いずれあぶり出される。最悪の場合、ハイツの住人も
巻き込んで、だ。
 つまり「俺たちはハイツから逃げ出した」事をヤツらに
知らせる必要がある。ハイツの部屋の数だけ地縛霊が
増えたんじゃ、あとあとミルク・ホールも建ちやしない。

 地下道からではなく、玄関もしくは裏口から、ヤツらに
わざと見つかる様に脱出……たく、冗談じゃないぜ。

「二手に分かれましょう。私は正面玄関から出て、ヤツらを
できるだけ足止めします。大神さんは、その子と一緒に
裏口へ。『私の』銃声が聞こえたら、すぐに脱出してください。」
「……分かった。(マリアの腕は信用できるしな。)
で、何処で合流する?」
「銀座通りの服部時計店を過ぎた所に、使われていない倉庫が
あります。シャッターに黄色で一、二、三の字。その
三番で。」
「よし、じゃあ行こうか。」

 あまり気は進まないが。

「……あ、あの……。」
「大丈夫よ、すみれさん。とりあえずここを抜け出さない
事には……。」
「晩メシも食えやしない。」
「大神さん!……ご免なさいね、こういう人なのよ。」

 あきれ顔のマリアを見つめる少女は、わずかに微笑んで
いる様だった。