ハードボイルド大戦(長文)/第四章



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投稿者: VR @ 202.237.42.72 on 97/11/28 17:59:05

In Reply to: ハードボイルド大戦(長文)/第三章

posted by VR @ 202.237.42.72 on 97/11/28 17:55:02


 俺は少女の肩を借りて、何とかヤツらを牽制しながら倉庫へと
向かう。が、怪我をしている分、こっちは分が悪すぎる。思った
より出血がひどい。

「だ、大丈夫ですか?」
「……残念ながら、ちょっとキツいな。」

 わずかに息をついて、俺と少女は倉庫の影に座り込んだ。

「……なあ、お嬢さん。俺は犯罪なんて何もやっちゃいない。
せいぜい助手のシャワーを覗く程度のかわいいもんさ。
そんな俺に、何も知らないまま殺されて、その上地獄へ
行けってのか?成仏しろって方が無理だろ。……心当たりは、
本当にないのか?」

 わずかばかりの沈黙があって、……震えた声が返ってきた。

「……ごめんなさい!私……」

 少女の瞳から涙が溢れ出す。訳ありのご様子だ。
震えた声のまま、少女は少しずつ話し始めた。

「私は、神崎すみれ、といいます……。」
「……あの、神崎重工の、か!?」
「はい。」
「で?そのお金持ちが、どう見てもプロの連中に狙われる
羽目になった理由は?」
「……『桜武』という機械を、ご存じですか?」
「ああ。名前くらいはな。この家業は情報収集が命でね。」

 確か、陸軍が開発した「霊子甲冑」とかいう、蒸気仕掛けの
テディ・ベアだ。

「……私は、適正があるとかで、その機械に幼い頃から
乗せられているんです。今の所、動かせるのは私だけだ、と……。」
「ほー。サラブレッドって訳か。それで?」
「乗っているうちに、だんだんその機械が恐ろしくなって……
人を殺す為の、機械なんです……量産するために、実験を
繰り返しているんです!……こんな物がたくさん造られたらと
思うと……怖くて、それで……。」

 先程の「モルモット」ってのは、そういう事か。……酷いもんだ。

「それで?おやつのアップル・パイでも投げつけてやったのか?」
「……設計図を、処分したんです……。」

 ……なんてこった。クレヨンの落書き程度にして欲しかったぜ。