ハードボイルド大戦(長文)/第三章



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投稿者: VR @ 202.237.42.72 on 97/11/28 17:55:02

In Reply to: ハードボイルド大戦(長文)/第二章

posted by VR @ 202.237.42.72 on 97/11/28 17:53:08





 不意に響く、エンフィールド・改の銃声。合図だ。
 俺は少女を抱きかかえたまま、ビルの影へと潜り込んだ。
煥発入れずに、マシンガンが俺たちの軌跡を容赦なく薙ぎ払う。

「マリア、うまい事やってくれてるかな……こっちは、逃げる
だけで手いっぱいだぜ。」

 タイミングを見計らい、ビルの影から影へと、俺たちは身を
踊らせる。銃声は次第に遠ざかり、気付けば俺たちは銀座通りの
路地までたどり着いていた。完全に日は落ち、人影は全くない。

「メシ抜きのジョギングは、胃に悪いぜ……。もうちょっと
だからな、お嬢さん。何処にも、怪我はないよな?」
「え、ええ……私は、大丈夫ですわ……。」
「……聞こうと思っていたんだけどな、その言葉使いは地か?
お嬢さんには似合わないぜ。そのドレスも、ちょいと目立ち
過ぎる。」
 
 上品な「すみれ」色のドレス。あちこちに装飾品が取り付け
られており、月の光りを反射してしまっている。いや、隠密性に
欠ける以前に、こんな上等のドレスを来ている彼女は何者なんだ?

「おかしい……ですか、私の服?」
「いや、なに。色気のない探偵助手のスーツばかり見てる
もんでね。素敵だよ。」

 その時、不意に鈍い銃声が辺りに響き渡った。

「ぐあっっ!!」
「!!」

 足に鋭い痛みが走り、俺は力なくその場に崩れ落ちる。

「……!!」

 道理で呆気なく逃げられたと思ったぜ。幾手にも分かれて、
尾行していたらしい。足を拭った俺の手には、真っ赤な鮮血が
こびりついてやがる。

「そこまでです。下らないお遊びは終りにしましょう。」

 実に感情のない台詞が飛んできた。集団の中から、その
リーダーらしき男が前に出てくる。俺は足を引きずったまま、
少女を連れて車の影に身を伏せた。

「探偵さん。その子を渡していただきましょうか?」

 不快なイントネーションだ。あまり友達にしたくないタイプだな。

「この子が何をしたと言うんだ?マイクロ・フィルムの入った
ホット・ケーキを食わせちまったか?それともマザー・グ−スに、
ミサイル発射のパスワードでも隠して覚え込ませたのか?」
「……口の減らない方だ。その傷は相当深いはずですが?」

 ああ、その通りだよ。頭がボーッとしてくるほどにな。

「その子の悪戯のお陰で、こちらは大損害でしてね。これからは
一生、我々のモルモットとして働いてもらわねば困ります。」

 モルモット、だと?どういう了見かは知らんが、何様の
つもりだ。……少女の肩が震えている。何処からか逃げ出して
来た、と考えるのが妥当か。

「欲しけりゃ捕まえてみな、ロリコン野郎!!」

 俺の愛銃が吠えると、男たちは左右に散った。
弾は六発。永くは持たない。