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投稿者:
神崎 操 @ pppc822.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/1/08 10:01:50
In Reply to: なんか変なお話(笑)その1
posted by 神崎 操 @ pppc822.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/1/08 10:00:27
翌日、公司はある決心をした。
その決心とは、「お母さんを探しに行く」と言うもので有った。
そして公司は父親に内緒で家を出た。
しかし、まだ10歳になるかならないかの公司の年齢で母親探しの旅など
出来ようはずもなく、駅に一人で居る所を警備員に保護されていた。
「君の名前はなんて言うのかな?」
警備員が公司に聞いた。
「………大神…公司…」
ボソリと小さな声で公司は警備員に答えた。
「じゃあ、お父さんとお母さんの名前はなんて言うのかな?」
警備員は公司に再び聞いた。
「お父さんの名前は、大神一郎………」
「お母さんの名前は………………………………………………………」
公司は母親の名前を告げる事がどうしても出来なかった。
そして、公司は泣き出してしまった。
「おいおい、なにも泣くことないじゃないか…」
警備員は突然に公司が泣き出してしまった為少々困惑してしまった。
「公司君だったかな?すぐにお父さんに来て貰うからこっちで待ってなさい」
警備員は声を殺して泣く公司を奧の部屋へと通した。
30分後家路に就く大神親子の姿が有った。
「公司、黙って一人であんな遠くまで行ったりしたらだめじゃないか」
一郎は、息子―公司に対してあくまで優しい口調で話しかけた。
「いったいどこへ行こうと思ったんだ?公司」
その一郎の言葉に対して公司はしばらく黙って考えゆっくりと小さな声で
答えた。
「神奈川………」
「公司………お前…」
「だってお母さん神崎家の一人娘なんでしょ?だから神奈川の神崎財閥の所に
お母さんが居るかも知れないと思って………」
公司のその言葉に一郎はなんの返事も出来なかった。
家に帰ってから一郎は自室で一人悩んでいた。
(公司も、もうすぐ10歳………になるか…)
一郎はしばらくの時間考え続けた。そして、意を決した表情で座っていた椅子
から立ち上がって部屋を出た。
「おい、公司…話が有る」
その日の夜―――
公司はベッドの中で泣いていた――――
ただ、ひたすら泣き続けていた―――――
「公司お前に言わなければならない事が有る」
「ウソだ!!」
泣きながら公司は叫んでいた。
「お前が今までずっと疑問に思っていた事だ………」
「そんなのは違う!!!」
公司の悲痛な叫びが続く。
「お前の母さんの事だ………………」
「俺は絶対に認めない!!!!」
全ての望みを断たれる事を公司の心は否定し続けた。
「何故、帰って来ないか………」
「嫌だ!!!!!」
公司の心は反発・否定・拒絶で占められ、全てに対して反旗を翻していた。
「私の妻で有りそしてお前の母親で有る…大神…いや、『神崎すみれ』は…」
「お願いだから!ウソだと言ってよ!父さん!!!!!!」
もはや、公司の精神は限界を遙かに越えるとてつもなく強く深い悲しみに
抵抗仕切れなくなっていた。
「お前がいくら探しても会う事は出来ない………」
「!!!!!!!!!!!!」
声にならない悲鳴を上げて公司は襲いかかる悲しみに抵抗する気力を失った。
「………ウ…ソだ……と………言って…よ……父…さん……おね…が………い」
「…冗…談………だったって……言ってよ……ウソ……でもいい…から………」
公司の瞳の焦点は虚空を彷徨い……
只、あの写真の中の母親のみを見つめていた。
「お前の母さんは……事故で…死んだんだ…」

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