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投稿者:
神崎 操 @ pppc822.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/1/08 10:08:52
In Reply to: なんか変なお話(笑)その7
posted by 神崎 操 @ pppc822.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/1/08 10:07:50
―1931年・夏―――――
神崎家邸宅―――
すみれは、産後の肥立ちも良く…久しぶりの外出とばかりに主人である一郎と
ふたりきりで町内の夏祭りに出かける所だった。
「すみれさん、この子の事はわたしにまかせて一郎さんと存分に羽を伸ばして
いらっしゃいな」
まだ、生まれて間の無い赤ちゃんを抱いた女性が目の前のすみれにそう言った。
「では、お言葉に甘えさせて頂きますわ、お母様」
すみれは、母親―神崎雛子にじぶんの子供の面倒を見て貰う事にした。
「びぇーーん」
ところが、雛子に抱かれたすみれの子は、自分の母親がどこかに行ってしまう
のを感じ取ったのか突然に泣き出してしまった。
「あらあら……困りましたわねぇ…」
すみれは、そう言うと雛子の手から我が子を抱き上げた。
すると、母親に抱かれて安心したのか赤ちゃんはウソの様に泣きやんだ。
「きゃっきゃっ」
そして今度は、母の胸の中で笑ってはしゃぎだした。
「ふふふ………現金な子ですこと…」
すみれは我が子をあやしながらそう言った。
―40分後―――
すみれが屋敷から出てきた。
「お待たせいたしましたわ………あなた…」
「お!やっと出てきたか!すみれ」
先程からすみれが出てくるのを外でずっと待ち続けていた一郎がすみれが
出てきたので、すみれの所まで駆け寄ってそう言った。
一郎は文句の一つでも言ってやろうかと思ったがすみれの性格を考えると
喧嘩になってせっかくのお祭りに行けなくなりそうだと思い、結局文句は
言わなかった。
「じゃ、行こうか?すみれ」
「ええ…」
そう答えたすみれは久しぶりのふたりきりの外出に心浮かれていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
神社の境内には、いろいろな出店が軒を連ねていた。
しかし、すみれにとってどの出店も対して興味を引く物は無かった。
愛しい人と肩を並べて歩くだけですみれは満足だった。
「ちょいとそこの麗しいお嬢さん♪」
出店の主人にそう呼び止められて止まらないすみれでは無かった。
「あらぁ………当然の事を言っても何も出ませんわよ」
すみれは、そう言いつつも出店の方へと歩いていった。
一郎もやれやれと言った表情ですみれの後について行く。
その出店は風車を売り物にしている店だった。
「あら?風車ですの?…ちょうどいいですわ!あの子に買ってあげましょう」
すみれは、屋敷で母親に面倒を見て貰ってる我が子の事を思いだし、この風車
を買う事に決めた。
「へいっ!何本にしやすか!」
「そうですわね………全部頂こうかしら…」
それを聞いた一郎は、一瞬顔が引きつったがあえて何も言わなかった。
「えっ?本当ですかい!?」
「と、思いましたけど…やはり、1本だけにしておきますわ…」
「え〜!そりゃないですよ〜」
「だって、何十本も持って歩いてたらお馬鹿さんかと思われてしまいますもの」
「ふははは………」
突然、一郎は笑い出した。
「ちょ、ちょっとなんですの?いきなり笑い出すなんてこんな人通りの多い所で
恥ずかしいですわ!」
そうすみれに言われた一郎は、何とか笑いをこらえて言った。
「ご、ごめん…すみれが風車を何十本も着物に差して歩いてる姿を想像したら
可笑しくて…」
そう言って一郎は再び我慢出来なくて笑い出した。
「失礼ですわね!あなた!そんな事考えて笑うなんて信じられませんわ!」
「………ま、はは…まあ!…ははは……そんなに怒るな…よ…ははは………」
一郎はそれでも笑いが止まらなかった。
一郎の笑っている姿を見ているとすみれもなんだか可笑しくなって来た。
「ふふふふふっ…」
そして、二人して出店の前で笑い続けていた。
「あの………買うの?買わないの?」
出店の主人は途方にくれていた。
それから二人はずいぶんと長い時間をいっしょに過ごしてから家路についた。

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