なんか変なお話(笑)その9



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投稿者: 神崎 操 @ pppc822.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/1/08 10:09:59

In Reply to: なんか変なお話(笑)その8

posted by 神崎 操 @ pppc822.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/1/08 10:08:52



もう辺りはすっかり暗くなっていた―――


二人が屋敷に向かって歩いて帰っている時に突然大きな爆音が響き渡った。

「な、なんですの?」

すみれは驚いて一郎に聞いた。

「お!今のは花火だ!そういや今日は花火大会だったな!」

一郎はすみれにそう言うと少し離れた民家の塀の上によじ登った。

「花火ですの?どこで?」

一郎は塀の上から音のした方を見た。
その時、一陣の強い風が吹き抜けた。

「おっと!危ない!」

一郎は風の勢いに塀から落ちそうになったがなんとか持ちこたえた。

「きゃっ!」

風はすみれにも襲いかかり、すみれが出店で買った風車が風で吹き飛ばされた。

「あら?風車が………」

すみれが風車が無くなったのに気付くと辺りを探し始めた。

「せっかくあの子の為に買って参りましたのに……」

………………俺は…………………………フラクタルコントローラーで………

「おかしいですわね………」

確かに生命体を生み出せると言った…しかし、それが一体何だと言うのだ…

「おい!すみれ!こっちに来て見ろよ!花火が綺麗に見えるぞ〜!」

それで、母さんを生み出したとしても所詮……………人形に過ぎない………

「落とした風車を拾ったら、すぐに行きますわ!あなた!」

俺は…只…母さんに居て欲しかった………生きていて……欲しかった………

「あら?あんな所にありましたわ………」

……………母さんの………………居ない………世界なんて………嫌…だ……

すみれは風車の近くまで歩いて行った。

だから……母さんの……………居る……生きている…世界に…したかった…

「お〜い!すみれ〜!まだか〜?花火が綺麗だぞ〜!」

……その為に……その為だけに…俺は…今…ここに……………………居る!

地面に落ちた風車をすみれは拾った。

フラクタルコントローラー…は………影響下にある…空間を操作出来る……

「今そちらに行きますわ!あなた!」

…即ち…空間そのものを操作出来る!…そして…その空間を構成するのは…

その時、一台の蒸気自動車が突如としてすみれに向かって暴走してきた!!

……空間の幅……………空間の奥行き……………空間の高さ…………………

「きゃあああああぁぁぁぁ!!!!!」

そして………………………空間の…時間!!!!!!…………………………

すみれの悲鳴が辺りに響きわたった。

僕は母さんに居て欲しかった………………俺は母さんに会いたかった………

「どうした!すみれ!!」




母さん………………………今、……やっと…………貴方に………逢えた……





すみれは我が身に何が起ころうとしているのか、考える余裕すらなかった。

一郎が振り返って見た時、暴走する蒸気自動車が最愛の妻に今まさに襲い
かかろうとしていた。

そのタイミングは、一郎にとって最悪のタイミングだった。

すみれは……一郎は……二人は……その場をわずかな距離すら動けなかった。

それ程の刹那の……瞬間……しかし………ふたりには…………永劫の様な長さ
にさえ思えた。

そして………

暴走する蒸気自動車が全てを巻き込みながら塀にぶつかって停止するまでの間
一郎は微動だに出来なかった。


只、一郎は呆然とするしか無かった―――


「おい………………すみれ……」

一郎は、力無く呟いた後、絶叫した。

「すみれ〜〜〜〜〜!!!!!」


………………………………………

………………………………………

………………………………………

「わ、わたくしは無事ですわ………………………」






















その後、蒸気自動車の追突場所から全く原型を留めない程、崩れた男性の遺体が
発見される。





―男性は即死だった――

―また、どんなに調査しても身元は不明のままだった――