『師走大戦』〜歳末大決戦〜(みんな、乗ってくれい)



[ このメッセージへの返事 ] [ 返事を書く ] [ home.html ]



投稿者: 天下無敵の無一文 @ ppp174.tokyo.xaxon-net.or.jp on 97/12/02 00:08:19

大神「...ついに、ここまで来たか。」

大神はひとりごちる。

彼と、彼の仲間の目の前には、銀座でも有数の大きさをもつ建築物がそびえている。

彼は、彼の仲間達の、それぞれの顔を確認する。

まず目に入ったのは、すみれだ。

神崎風塵流なぎなた術を操る彼女の得物は、当然の如くなぎなただ。

冬の冷たい太陽のもと、抜き身の真剣が鋭い光をはなっている。

いつもの、携帯用の折り畳み式なぎなたではない。実戦用の、もっと大ぶりで長いものだ。

つぎは、マリア。

彼女は、愛銃のエンフィールド改を黒いコートの下に隠し持っているはずだ。

マリアのことだ、十分な数の弾装を用意していることだろう。

アイリスを見ると、彼女はいつものように親友のジャンポールを連れていた。

彼女にとって、この上もなく頼りになる相棒だろう。

そして、カンナ。

桐島流の琉球空手を得意とする彼女にとって、武器は大して意味を持たない。

そう、鍛え上げた彼女の肉体と拳こそが、最強の武器であり、最高の防具なのだ。

紅蘭は、大きなふろしき包みを抱えている。

おそらく、その中は彼女の発明品で満たされていることだろう。

そういえば、この作戦の前の数日間、彼女の部屋からは爆発音が絶えなかった。

万全を期すために、何度も何度も実験を繰り返した結果だろう。

最後に目に入ったのは、さくらだ。

裏御三家のひとつ、真宮寺家の末裔である彼女の武器は、先祖代々伝えられ、父の形見でもある、

霊剣『荒鷹』

古来より、あまたの魔物を屠ってきた神秘の刀。

それに北辰一刀流免許皆伝の彼女の剣技と、たぐいまれなる霊力があれば、恐れるものなどありはしない。

彼女と大神の目があったとき、彼女は小さく、しかし力強くうなずいて見せる。

大神は、再び視線を戻し、今回の作戦目標である建物を見据えた。

銀座有数のデパート、『ほおずき百貨店』

それが、建物の名だ。

デパートとしては異例の、薄利多売をモットーに躍進を続けるその売上高は、あの老舗、三越デパートに勝るとも劣らない。

飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けるこのデパートも、今や人外の者どもが巣くう都会の魔宮と化している。

類い希なる霊力を持つ帝国歌劇団の面々は、常人が感じることの出来ない、言いようのない強大な妖力をひしひしと感じていた。

大神「...みんな、分かっているとは思うが、
   この戦いは、俺たち帝劇の命運を決する戦いと言っても
   過言ではない。
   恐らく、今までのどんな戦いよりも辛く、厳しいものに
   なるだろう!!」

作戦前の檄を飛ばす彼の言葉を、全員が緊張した面持ちで聞いている。

その表情には、ともすれば脅えの色さえ見えた。

霊子甲冑に乗っていないとはいえ、それぞれが、かつて帝都を強大な魔の力から守り、それを打ち払った戦士達である。

それほどの実力を持ち、なおかつそれぞれの最強の武具で武装した彼女たちが、一体何に脅えると言うのか――

大神「今回の戦闘は、屋内戦だ。建物の規模から言って、
   霊子甲冑は使えない。だが恐れる必要はないぞ!
   忘れるな!俺たちの背中には、帝劇の未来がかかって
   いる!
   そして、俺たちはあの激戦をくぐり抜けて来たんだ。
   不可能な事などはない!!」

全員が無言でうなずく。

そうだ、自分たちはあの悪魔王サタンさえも倒した。

みんなの未来を守り抜く力。

それは、どんな不可能も可能にし、夢を勝ちとる力なのだ!

大神「敵は、このデパートの各部署に散らばっている。
   各個撃破といきたい所だが、今回は時間がない。
   危険だが、4班に別れての作戦行動になる。
   マリア!」

マリア「はい!」

大神「君は、すみれ君と一緒に3階へ行ってくれ。
   恐らく君達の、一瞬先を読み、標的を補足する
   見切りの能力が最も必要な場所だろう。」

マリア「了解しました。」

すみれ「まかせてください、少尉。」

大神「紅蘭!君にはアイリスと一緒に5階から上を任せる。
   君の知識と、発想。それにアイリスの感覚が勝敗を
   分けるはずだ。」

紅蘭「よっしゃ!ウチにまーかしときぃー!!」

アイリス「アイリス、お兄ちゃんのためにがんばる!」

大神「カンナ!
   悪いが君には単独行動をとってもらう事になる」

カンナ「大丈夫さ!何でも言ってくれ!!」

大神「すまない。君は地下へ向かってくれ。
   恐らく、最も過酷な戦場になるはずだ。
   本当は俺もついて行きたいんだが...」

カンナ「なーに、あたいに任せとけって!
    隊長は、安心して指揮をとってくれよ!」

親指を立てるカンナに、大神はうなずく。

大神「さくらくんは、俺と一緒に1階と2階を受け持つ。
   場所的に、みんなのフォローに回りやすいからな。
   無理はするなよ、危なくなったらすぐに俺たちを
   呼ぶんだ。いいな!」

全員『了解!!』

大神「いいか、必ず閉店の鐘までに目的を達成してくれ。
   でないとすべてが手遅れになってしまう。」

すみれ「ご心配なさらずとも、私一人でも十分ですわ。」

大神「...その意気だ。」

すみれのいつもの一言で緊張がほぐれたのか、みんなが生気に満ちた、いい顔になる。

大神「よし!作戦開始!!」

全員『了解!!』

掛け声と共に、エントランスホールへと駆け出す帝国歌劇団の面々。

行く先には、すでに異形の怪物(おばさん)達が黒山の人だかりとなっていた。

大神「さくらくん!突破口を開いてくれ!!」

さくら「了解!」

彼女は霊剣『荒鷹』に、己の霊力を込め、それを一気に解き放つ!!

さくら「破邪剣征、桜花放神ーーー!!

放たれた必殺技に、たまらず吹っ飛ぶ買い物客と、『歳末大売り出し!!』の看板。

大神「今だ!総員突入!!」

全員『了解!!』

命令一下、それぞれの作戦区域に向かって散っていく。

大神「店主(無一文)め、改装(おぜん立て)して
   入り口(参加者層)を広げ、客をかき集める
   作戦か。味な真似を。」

彼らは行く、『5割6割当たり前!!』や、『出血大サービス!赤字覚悟の特別価格!!』の看板を踏み越え、並み居る強敵(おばさん達)を蹴散らし。

帝劇の、未来のために...

悪を蹴散らし正義を示す、それが彼等の使命なのだ...