Re: 【師走大戦】再会は悲しみの川を越えて・3(長文)



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投稿者: うぉーろっ君 @ tkti012.osk.3web.ne.jp on 97/12/27 07:55:50

In Reply to: Re: 【師走大戦】再会は悲しみの川を越えて・2(長文)

posted by うぉーろっ君 @ tkti012.osk.3web.ne.jp on 97/12/27 07:54:46

☆          ★          ☆


『――それで勝ったつもりでしゅか?』

 大神の刀は、刃の中程まで甲冑の背中に突き刺さっている。甲冑の攻撃を
かいくぐって背後に回り込み、突き立てたのだ。相手が生身の人間ならば
脊髄が砕かれ、致命傷となるところだが。

『その程度で俺の想いが止められるとでも……!! 何!? 動けない
だと!?』


 甲冑が動こうとする力の向きを先読みし、その反対方向のベクトルを、刀を
通じて与えているのだ。腕は自由に動かせるだろうが、それをぶつけるべき
相手は背後にいるため、攻撃は届かない。

『味な真似をするでしゅね! でもこの程度の技、一瞬で破れましゅよ!』
「一瞬あれば充分! 狼虎滅却・転移夢想(てんいむそう)!」

☆          ★          ☆


 光が見える。
 全くの闇の中で、目を開けていられないほどの輝きを放ち。
 でも、目を向けずにはいられない、優しい光が。

――琴の音の 流れて消ゆる 川の瀬に すもとりばなと ともに結ばん――

 光の中から声が聞こえる。
 この光の中に一歩、足を踏み出せば、自分は救われる。
 血の通わない冷たい身体、押しつけられた恩……全てのしがらみから。
 そんな……気がした。いや、理解した。理屈ではなく、本能的に。

『しかし……』

 その一歩が踏み出せない。未知の扉を開ける事への不安。それもまた、本能。
 理解も不安も、全ては自分が人間であるが故。
 しかし、

――琴の音の 流れて消ゆる 川の瀬に すもとりばなと ともに結ばん――

 さっきと同じ言葉に添えられたもう一つの言葉で決心が付いた。
 一歩を踏み出す、決心が。

「俺と一緒に、彼女を守ろう……」

『ああ……今行く。末永くよろしく頼むぜ、少尉さん』

 もう、心は一つ。しがらみのない今、葛藤する必要はない。
 少年は光をくぐる。
 守れなかった約束を果たすために。
 そして彼女を、守るために。