マトモ仮想外伝7,雪の下に蠢く闇



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投稿者: Rudolf @ 202.250.120.56 on 98/2/25 07:08:59

外伝、雪の下に蠢く闇

 

 太正十三年弥生の月、第二次降魔戦争も多大な犠牲を払いながらも終結し、帝国華撃団は開店休業時代に入った。そんな中、崩壊した銀座大帝国劇場の再建に着手した帝劇。当然、役者家業の花組にも出番はなく、一時休暇が与えられた。

 花組の若手スター、真宮寺さくらは破邪の血統の血を霊剣荒鷹と共に現在に受け継いだ者、先代の継承者である彼女の父、真宮寺一馬は第一次降魔戦争でその命を散らし、故郷の仙台に埋葬されている。さくらはその墓前に今回の戦いの終焉を報告するために列車に乗った。以前はあてどのない旅に出、その途上に父の墓にも参ろうと帝劇を後にしかけた彼女だが隊長、大神少尉に諭されて帝劇に戻っていた。今度は大神も、帝撃総司令たる米田中将も認めた旅である。

 さくらの顔に以前の様な自らへの不安はない、彼女の席は帝劇にある。いつ戻ってもそこに真宮寺さくら本人を待つ人々がいる。今回の旅は彼女への里帰りという上の心尽くしであった。

 「ふう、仙台か。久しぶりね、お元気ですか、御婆様、お母様。」

 仙台に近付くに連れ、列車の窓から見える景色が冬景色を纏ってくる。三月弥生といってもまだ北国には冬の爪痕が随所に残る。だが、今年は格別の残り具合だそうだ。

 「お父様、さくらは帝都を守りました。お父様が命を捨てて守り抜いた帝都を、私も。」

 一馬には米田がいた、山崎真之介がいて、藤枝あやめがいた。そして四人の内なお生き残る者はついに米田一人、藤枝あやめも第2次降魔戦争にて還っていった。そしてさくらにも米田がおり、あやめがおり、花組の仲間達がいた。そして何より大神一郎の存在、彼の存在が彼女の中では日に日に大きく、そして何時しか違う感情が芽生えていた。

 「大神さん…、大神さんがあのとき私を連れ戻してくれたから、私は自分を、見失っていた自分を取り戻すことが出来ました。もしあのままお父様のお墓に参っても、きっと叱られたでしょうね。」

 破邪の血統の先駆者として父親がさくらの道を指し示していた、さくらはこれまでは、第2次降魔戦争以前は彼の示す道に沿って進んでいただけなのかも知れない、この旅こそ彼女がついに父の跡より分岐して自らの道を突き進む出発点なのかも知れない。

 「………長らくのご乗車有り難うございました。次は終点、仙台、終点です………」

 さくらが思いに耽っている間に時は流れ、もう仙台であった。辺りは薄暗く、今にもとっぷりと暮れそうであった。

 さくらは降り立った、想いの地、愛しき人々の住まう故郷、仙台に。ここでさくらを待つは懐かしき故郷の土に愛すべき家族、そして……………。