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投稿者:
敏 @ ppp16090.win.or.jp on 97/12/26 13:25:52
12月26日。夜10時。
たとえ12月公演が終わっても、年内の公演が全て終わっても、
帝劇全てが休みにはいるわけではない。
とりわけ彼にとっては、それは決して安息の日々などではあり得ない。
(ふう……ようやく今日の仕事が終わった……)
大掃除に伝票整理と、あっちこっちへ引っ張り回された大神一郎は、
就寝にはまだ大分早い気もしたが、ベッドにごろんと横になった。
夕食を食べそこねたのが少し心残りと言えば心残りな気もしたが、
彼にはもうそこまで深く考えている余裕は無かった。
ただ、もう何事も起こらず、平穏に明日を迎えることだけ……
「待ちなさい、アイリス!」
(マリアの声だ……)
「やだ!マリア、放してよ!」
(アイリス……な、何だ?)
訳も分からず、大神はベッドから飛び上がって、部屋から飛び出した。
「どうしたんだ?マリア、アイリス?」
「あっ、隊長……。」
「お兄ちゃん、アイリス、フランスに帰るの!」
「ええっ?」
「アイリス……」
「どうして突然そんなことを言い出すんだ?」
「だって……」
堪えきれなくなったのか、アイリスはぶわっと泣きじゃくった。
「日本にはサンタさん来てくれないんだもん!プレゼント貰えないんだもん!」
「サンタさん?」
「とにかく、今夜はもう遅いから、早く寝なさい……。」
「……ひっく、ひっく……うん……。」
思いっきり泣いて、少しは気が晴れたのか、アイリスは右腕の袖で涙を拭いながら自室に引き返していった。
「……ふう。さてと、マリア、一体……」
大神の質問を遮るように、彼女は来た。
「一体何やの?アイリスの様子が変やったけど?」
騒ぎを聞きつけて、二人の前に現れたのは、帝劇花組の誇るムードメーカー──李紅蘭だった。
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