[ このメッセージへの返事 ]
[ 返事を書く ]
[ home.html ]
投稿者:
敏 @ ppp16090.win.or.jp on 97/12/26 13:44:01
In Reply to: 【師走大戦】一日遅れの聖夜〜中編(長文)
posted by 敏 @ ppp16090.win.or.jp on 97/12/26 13:31:34
消灯時間を少し過ぎた頃……
一組の男女が、その少女の部屋の前へと、足音も立てず忍び寄る。
「……なあ紅蘭、サンタクロースの服って、本当にこれであってるのかな?」
「マリアはんの言ってたとおりの格好や。間違いないで。」
「そうか。でも……アイリスをだませるだろうか?」
「それは大神はんの演技次第や。華撃団隊長で海軍士官学校主席の実力、見せてみいや!」
「そうだな。よーし、行って来るよ。」
「頑張ってや!」
隊長も主席も演技とは全然関係ないことなど、大神は気付く訳もない。
_____________
コンコン……
落ち着かない気持ちで寝つけずにうとうととしていたアイリスは、ドアを叩くその音にハッと目を覚ました。
「誰?」
「サンタクロースだよ。」
「サンタさん!?」
あまりに唐突な──それでいて、心のどこかでは、それ以外に有り得ないと信じていた──その名乗りに、
アイリスは驚きと喜びが入り交じった声をあげた。
「開けておくれ。」
「うん!」
ガチャ……
「……!」
喜び勇んでドアを開けたアイリスは、目の前にいた人物を見て──しばし目を丸くした。
(……しまった、バレたのか?)
しかし、すぐに気を取り直したように屈託のない笑みを浮かべた。
「……わーい、サンタさんだ!」
(ふう、バレたわけじゃないようだ。)
心の内で、ほっと胸をなで下ろす。
「ほら、プレゼントだよ。」
「わあい!ね、開けてもいい?」
「どうぞ。」
「うわあっ!かわいいお人形!」
「気に入ってもらえたかい?」
「うん!ありがとう、おにい……じゃなかった、サンタさん!」
「じゃあね。来年のクリスマスまで、いい子にしてるんだよ。」
「は〜い!」
……バタン……
「……。」
アイリスはプレゼントの人形を両腕でぎゅっと抱きしめ、うつむいて肩を震わせる。
「……ぷ、ぷぷぷ……キャハ、キャハハハハハ!」
しかし、ついにこらえきれなくなって、堰を切ったように──腹がよじれるほど笑い転げた。
_____________
「どうやった?」
「ああ、バッチリだ。うまくいったよ。」
「そうか。よっしゃ、めでたしめでたし、やな。」
「でも、この服、やっぱり変だったんじゃないか?アイリスが変な顔してたぞ。」
「そうやろか?でもええやん、もう終わったことやし。」
「……そうだね。」
_____________
「お兄ちゃん、おはよう!」
「やあ、おはよう、アイリス!何かいいことでもあったのかい?」
「えへっ、分かる?ゆうべサンタさんにプレゼントもらったの!」
「サンタさん……へえ、よかったね。」
「えへへ……そうだ、お兄ちゃん、今度デートしようよ!」
「そうだね、そうしようか。」
「えへっ!」
昨夜、赤い麦わら帽子と真っ赤に塗りたくったフランスの軍服、しかも唐草文様の風呂敷包みを抱えて
つけ髭は立派すぎてどこに顔があるのか分からないほどという格好で
自室に現れた大神を思いだしたからというわけでもなく──
──少女は満面の浮かべた。
(ありがと……お兄ちゃん)
<終>
──昨夜、プレゼントをもらいそこねた全ての少年少女に捧ぐ……っていうか、
こんなの捧げられてもすっごく迷惑だとは思うけど(^^;──
12月26日 敏
|