第三幕



[ このメッセージへの返事 ] [ 返事を書く ] [ home.html ]



投稿者: 倭寇三勇士 @ ykh155.tky.threewebnet.or.jp on 97/10/05 00:04:01

In Reply to: 第二幕

posted by 倭寇三勇士 @ ykh049.tky.threewebnet.or.jp on 97/10/04 23:48:37

(第三幕)

遠山危篤の噂は、あっと言う間に町中に広がっていった。
「遠山様は無事だかあ?」
「ええい、騒ぐでない。ただの噂じゃ、遠山様は今、温泉旅行に出ておる。」
毎日、多くの群衆が奉行所に詰めかけ、安否を気遣うのだった。もうサターン町はパニック状態、収集のつかぬ状態であった。

目付・武藤(以下)「拙者、老中den野忠邦様配下、武藤と申す者。遠山殿が御病気と聞き及んだので、見舞いに参った。御老中もいたく心配されておる。遠山殿の御容体は如何なものか?」
「はっはははは!」
「無礼な!何がおかしい!?」
「いや、失敬。しかし、これはなんとも滑稽な。まさかden野様ともあろうお方が、下賤なる大衆瓦版の憶測記事を信用なさるはずはあるまいて。大方、大奥の暇なお局様方の入れ知恵によるものと思うと、可笑しゅうてしかたありませんなんだ。」
「ぬ...、では遠山殿はご健勝であるということか?」
「勿論でござる!」
「では遠山殿に、お目通り願いたい。」
「それはできぬ相談でございますな。なんせ今、御奉行は道後温泉まで湯治に出かけられておりまする由。」
「なんじゃと。では、遠山殿の奥方にお会いしたい。」
「奥方様にお会いされてなんといたす?」
「事の真相を改めるまでじゃ。」
「拙者の言うことが信じられぬのですかな?」
「当たり前じゃ。そのような戯言を真に受けていられるか。」
「拙者を嘘吐き呼ばわりいたすか!うぬぬぬ....、これはまっこと武士の恥じゃ!斯くなる上は、腹ばかっさばいても、ご先祖様にお詫びいたす。御免!」
「な!何をなされる。お、落ち着かれよ脇坂殿!」
「ええい武士の情け、死なせてくれぇ!」
「わ、わかった。拙者の早とちりじゃ。だ、だから刀を収めてくれい!」
「わかって頂けたでございまするか武藤殿。」
「ええい、もう十分じゃ。邪魔したのう。遠山殿には、よろしく伝えておいてくれ。では御免…。(遠山殿も忠義の部下をもって幸せじゃのう...)」



武藤が帰った後、
「ふう、それにしても参ったのう...。」
同心・伊東(以下)「脇坂様、お疲れのご様子でござるが。」
「見ての通りじゃ...。」
「心中お察し申し上げまする。」
「そんなに気を遣わんでもよろし。それよか、ねずみ講僧事件の時はすまなんだな。折角、対策本部長に任命しておきながら、先走ってしまったと、御奉行も詫びておったぞ。」
「いえいえ、恐悦でございます。そのような言葉をかけていただけるとは。」
「そうか、殊勝な心がけだな。安心したぞ。」
「それよりも脇坂様、御奉行の件で気になることがござる。」
「気になること?なんじゃそれは。」

伊東は、当たりを見回して、人のいないことを確認すると、
「御奉行が襲われた理由がわかりませぬ。物取りでないことは、財布が盗まれておらぬ事からわかりまするが。となると御奉行に恨みを持つ者の犯行かと。」
「それは儂も気になっておったところじゃ。御奉行があのような格好で出歩いておることを知っている者といえば過去にお白洲に上げられた者しかおらぬ。今、疑わしい者を探り出しておるところじゃ。しかし、もしその浪人が雇われ刺客だとすると、やっかいじゃな。裏で糸を引いておる者まで捜さねばならん。」
「実はまだ一番疑わしいところが調べられておりませぬ。」
「一番疑わしいところ?」
「"灯台もと暗し"というではありませぬか。」
「な、なんじゃと!?この奉行所内に犯人がいるというのか。」
「あくまでも可能性を申し上げたのでございます。」
「うーむ。確かに手を着けていないところではあるが、仲間を疑うのも気が引ける...。」
「事は一刻を争いまする。何らか手をうたれた方が良いと存知まする。」
「よし。ちと探りを入れてみるか。しかし伊東、このこと安易に口走る出ないぞ。」
「心得てございまする。」