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VR @ 202.237.42.71 on 97/11/25 18:18:31
In Reply to: ハロウィン、その後の帝劇/その一(長文)
posted by VR @ 202.237.42.71 on 97/11/25 18:16:09
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「我々に対する上告もなしに、あいつらは一体何を
していたのだ?」
「警官からの説明も曖昧だな……。」
渋い顔をした重役が並ぶ列席に、ただ一人起立していた
のはまだ幼さの残る少女であった。重役の一人が、
少女に顔を向ける。
「戦闘の形跡は?」
「……戦闘、並びに抵抗の痕跡は見当たりません。
降魔の血痕も採取できませんでした。」
少女は淡々と答えた。
「降魔に対して、成す術もなく殺されたというのか!?」
「考えられん……不意を突かれたにしても、あいつらは
戦術に長けている。数人がかりで、降魔に傷一つ負わせる
事もできなかったとは……。」
互いに顔を見合わせてざわめく重役を征するかの様に、
「……おそらく……」
少女が口を開いた。列席の重役の視線が、少女に注がれる。
「最近報告が相次いでいる、新型降魔の仕業かと。」
室内に重い空気が流れた。
「今までの降魔よりも遥かに高い知能、戦闘力を持つ降魔……。」
正面に鎮座していた少女の上官らしき人物が、
少女の弁を確認するようにつぶやく。
「はい。でなければ、我が部隊の精鋭たちが、何の抵抗もなく
破れる筈がありません。」
「むう……。」
どうやら重役にたちにとっては、現在頭を悩ませている事柄らしい。
少女は淡々と続ける。
「現在開発されている霊子甲冑も、新たな降魔に対しての戦力として、
帝都防衛の為に投じるべきだと考えます。」
「……それに関しては、君の意見すべき事柄ではない。」
上官らしき人物は、しかし怒ったふうでもなく、彼女に
お決まりの軍式抑制を下した。
「……失礼しました。」
「今回の件に関しては、正式な調査の予定もある。君は
引き続き、現場の分析にあたってくれたまえ。以上だ。」
「了解しました。」
少女は敬礼を済ませると、今だ困惑顔の消えぬ重役を背に、
扉へと向かった。
「……高村椿。」
先ほどの上官が声をかけると、少女はもう一度そちらに
向き直る。
「……ご苦労だったな。」
どうやらこの上官、さほど話の分からぬ男ではないらしい。
彼女は礼を返したのち、重苦しい会議室を後にした。
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(その三へ)
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