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投稿者:
こっちが本当の四です/VR @ 202.237.42.71 on 97/11/25 18:28:48
In Reply to: ↑その三の間違いでした(TO)
posted by VR @ 202.237.42.71 on 97/11/25 18:24:48
長時間モギリをやっていると、その場から外れる訳にも
いかないので、こいつをいつか丸ごと一箱食ってやろう、
などとくだらない目標を立てたりもした。というのも、
大抵は花組の誰かにキャラメルを勧めてしまうので、
一箱全部食べた事などないからだ。
幸い、今日はハロウィンの翌日ということで、
まだ花組の皆は疲れて眠っているらしい。これは実行の時か、
などと考えた矢先に、一日遅れのハロウィンが笑顔でやって来た。
「おーがみさーん。」
声の主は由里であった。彼女は白い手袋を付けたままの両手を
差し出すと、悪戯っぽく微笑んだ。ロビーを通る際に、
俺の口から発するわずかな甘い香りを悟ったらしい。
今日も願いは成就されなかった。
俺は箱を傾けて、出てきた三粒のキャラメルを献上する。
それを受け取って、彼女はもう一度微笑んだ。
「お疲れ様。」
やはりそれは、何に対してのねぎらいなのかが良く分からなかったし、
多分それで良かったのだろう、と再び解釈することにした。
お菓子を受け取ると、お化けは消える。彼女もハロウィンの
条理に従い、事務室の方向へと去っていった。
俺はモギリの椅子に腰を降ろし、何げなしにキャラメルの
数を数えてみた。
俺が一つ、由里に三つ。十粒入りで、残りは六つ。いつも
半端に残るキャラメルも、今日は奇麗に無くなりそうだ。
そんな事を考えていると、
「大神さんは、毎日がハロウィンですね。」
売店の中から、椿の声が飛んで来た。考えている事を
ずばり言い当てられて言葉を失った俺は、返事代わりに
キャラメルの箱を振ってみせた。そしてこのキャラメルも、
俺をハロウィンの使いに見立てて差し出されたトリートだったのだ
という事に気付くまでには、そう時間はかからなかった。
考えてみれば、このちっぽけなキャラメルも、分け与える
相手がいるというのは幸せな事なのかも知れない。聞こえ始めた花組の
面々の雑談、階段を降りてくる足音……。俺は椅子から立ち上がり、
笑顔で声をかけた。
「―――お疲れ様。」
一人で一箱全部を食べる機会など、永遠に無いことを願いながら。
(終)
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