Re: ハロウィン大戦・黒之巣会の野望3



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投稿者: HardRockKingdom @ pppA303.kyoto-inet.or.jp on 97/11/18 01:09:58

In Reply to: Re: ハロウィン大戦・黒之巣会の野望2

posted by HyperRocketKid @ pppA303.kyoto-inet.or.jp on 97/11/18 00:56:34

そして遂にその日がきた。

その年のハロウィンは黒之巣会の地道な努力の結果、
帝国政府と亜米利加大使館と亜米利加政府、日米文化交流協会など各種団体協賛という
とても規模の大きなものとなっていた。
「これだけの人が集まれば我が計画の成功は間違いないじゃろう。」
と天海は自分の計画がうまくいったことを喜んでいた。


「すごい人だかりね、由里。」
「それはそうよ、かすみさん。帝都市民みんながこのお祭りを楽しみにしてたんだから。」
「このお祭り、ハロウィンって言ったかしら。」
「そう、ハロウィンは元々西洋のお祭りだったらしいけど最近なぜか人気が出てきて
帝都でも行おうっていうことになったらしいんですよ。」
「そういえば椿ちゃんはどうしたのかしら。」
「帝劇も会場の方で特別公演をすることになって、そっちで売店も出張販売してるみたいですよ。」


そしてその会場裏では天海と四天王たちは正装に身を包み待機していた。
天海たちは、クロノス・ハロウィン推進協会として、この会場に呼ばれていたのだった。
ちょうどそのころ舞台の方では、花組特別講演で盛り上がっている最中だった。

「ところで天海様…ではなく、天海会長。計画はいつ実行するのですか。」
弥勒が尋ねる。
「ウム。ハロウィンが最高潮に達したとき、皆が浮かれておるときにこの脇侍改・ハロウィン仕様で一気に片を付ける。」
そういって天海はハロウィンらしく仮装した脇侍を指さした。
「遂に我ら黒之巣会の野望が実現するのですね、天海様!」
刹那は感極まってつい大声を上げてしまった。それを天海がたしなめる。
「天海会長じゃ、刹那。それに声が大きいぞ、計画を台無しにするつもりか!」
そういいながら天海は声を荒げてしまった。それを聞きつけた近くの男が天海に声をかけた。
「天海さん、計画ってまだ何か楽しい仕掛けでもあるのですか?」
声をかけてきた男は大神一郎であった。大神は花組・ハロウィン特別講演の手伝いできており、
彼もまた会場裏で待機していたのだ。
「い、いやこちらの話じゃ、気にせんで下され。ところで大神さんとは初めてですな、よろしく。
いや、今日は花組のみなさんにも手伝ってもらって、おかげさまでこのお祭りは大盛況です。」
慌てた天海は一気にまくしたてて、話題をすり替えた。
「あれ私の名前ご存じなんですね。こちらこそ天海さんのような立派な方に公演の機会を
頂いて光栄です。」
天海は軽はずみな自分の言動に後悔したが、大神はそれほど気にしていないようなので安心した。
「と、とりあえずこの祭りを楽しんでいって下され。では、失礼。」
天海は逃げるようにその場を去った。内心では「今に見ておれ。」と思いながら。


そしてハロウィン祭はいよいよ最高潮を迎えていた。
花組特別講演で観客は沸き、人々は振る舞われた西洋の料理や酒、西洋の舞を楽しみ、
子供たちには西洋のお菓子が配られていた。
そしてそんな浮かれた人々をあざ笑うかのように天海は舞台の上にいた。


(遂に計画を実行する時が来た!)


天海は右腕を大きく掲げそして振り下ろした。それは裏で待機している四天王への合図だった。
そして天海は楽しんでいる大衆に向かって大声で呼びかけた。
「聞けぃ、帝都の者ども!我は天海…。」

その時近くにいた亜米利加親日大使のエリック=ギルバードがマイクを持って天海のそばに歩み寄った。
「帝都市民のみなさン、紹介が遅れましタ。この方が今回のHalloweenの主催シャ、
クロノス・ハロウィン推進協会のLeader、天海氏でス!」
その言葉に、盛り上がっていた人たちは歓声を上げ、天海を歓迎した。
そんな人々の歓迎を受け、天海の心の中で何かが動いた。

天海はずっと一人だった。
400年生きたばかりに人々からは魔人と呼ばれ敬遠されてきた。
しかし今は違う。民衆は自分を歓迎してくれている。こんなにうれしいことはない。
天海は先ほどまでの陰鬱な表情を一転させマイクを握ると歓迎してくれている人々にこう言った。
「ただいまご紹介に預かりました、ハロウィン推進協会会長天海でございます。
この度はたくさんの人たちに集まっていただき、ハロウィンを広める活動に携わってきたものとして、
大変うれしく思っております。みなさん今日は心ゆくまで楽しんでいって下さい。」

そう言い終えた天海の顔は実に晴れやかであった。

観客はその言葉を聞いて一層盛り上がり、天海を囃し立てた。
するとそこに先ほどの天海の合図を受けた黒之巣会の者たちが会場に飛び込んできた。
しかしその場の異様な盛り上がりが、自分たちの想像していたものとあまりにもかけ離れているので
四天王たちはうろたえた。

人々は会場に飛び込んできた四天王たちを見てざわめいた。
「これから私たちクロノス協会の者たちで余興を行います。みなさんに楽しんで頂ければ幸いに存じます!」
そして、渋々四天王たちがやった余興は好評で、人々はますます盛り上がり、
会場付近はものすごい騒ぎとなった。



「何か会場の方が盛り上がっているみたいね。」
「ちょっとあたいも行って来ようかな。」
「あ、ほなウチも一緒に行くで。」
「アイリスもー。」
「大神さんも一緒に行きませんか。」
「そうだね、行ってみようか。」
「しかし、わたくしたちの公演より盛り上がっているなんて失礼じゃありませんこと。」
「あやめくん、俺たちも行くとするか。」
「フフ、支配人もお祭り好きですね。」



こうして黒之巣会主催のハロウィン祭は、天海の思惑とは大きくかけ離れたものの、
大いに盛り上がり熱気に包まれたまま夜遅くにその幕を閉じた。

(ちょっとだけ続く)