企画をされている方へ(長文)



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投稿者: BLAST HAMMER @ ppp403.246.ne.jp on 98/3/01 16:18:56

私は、とあるゲーム製作会社(ソフトハウス)で働く者です。
そこでプログラマをやっております。
現在の会社が2社目となり、以前も同じゲーム製作会社に
勤めておりましたが、そこで出したゲームが、予想の半分も売れず
その結果多額の負債を抱えてしまい、倒産しました。
その時のゲームの企画は、いわゆる企画屋と呼ばれる会社にお願いした
ものでしたが、ここから派遣されてきた企画者が結構ひどい方でした。

何故派遣されてきたか、と申しますと、その時私が勤めていた会社の
上層部が、その企画を立てられた方をディレクターとして、その会社に
出向してもらえるよう併せてお願いしたから、らしいんですね。
つまり、ゲームの企画者が、ディレクター(監督)を兼任した、という
ことです。

企画自体は、結構良いものだったと思います。
私も企画を読ませてもらいましたが、なかなかいいなぁ、と結構感動できる
部分があったのを覚えています。

一番最初のミーティングでは、その企画者兼ディレクターが紹介されただけで
その倒産した会社の上層部の方が、企画のおおまかな説明をしただけに
終わってしまいました。
そうこうしているうちに、ゲームの製作が始まりました。
渡されたスケジュール管理表にも特に不満はありませんでした。

ですが、製作途中で、仕様の細かい部分で分からないところが出てきて、
先の企画兼ディレクターに説明をもとめました。
ですが、その時私には、彼が何を喋っているのか、まったく理解できません
でした。
彼は何を作りたいのか、きちんとしたビジョンを持っていない方だったのです。
そして、システム上どうしても無理な部分もあったりしても、全くそれを
理解しようとしてくれませんでした。
更に、突発的に思い付いたような、取ってつけたようなイベントを、始めの
企画に繋げはじめ、その量は結構なものになり、スケジュール的にかなりの
負担がかかるぐらいにまでなってしまったのでした。
私が作ってて納得できるイベントならまだいいのですが、
「こんなものまで必要なのか?」
と疑問に思えるようなイベントも結構出てくるようになったのです。

そのうちスケジュールは遅れはじめました。
私は、その時の会社の先輩を通じて、上の方に
「緊急ミーティングを開いてくれ」
と懇願しましたが、聞き入れてもらえませんでした。
勿論普通のミーティングはあるにはあったのですが、スケジュールの
照らし合わせのような慣例的なもので、ゲーム自体についてのミーティングは
各自で行なうよう指示を受けただけでした。

スケジュールの遅れを取り戻そうと必死になって、会社に泊り込むようにも
なりましたが、例の企画兼ディレクターは定時になると帰っていたほどです。
まあ、企画兼ディレクターが夜中まで残っていても何か出来る、というわけ
ではありませんので、帰っても文句を言う権利はないのですが、なんとなく
嫌な気分だったのを覚えています。

更に、何か質問しても相変わらずよく分からない言葉を並べ立てていました。
せめて文書にしたり、ホワイトボードに図を書いたりして欲しかったのですが、
そういうことを滅多にしない方だったのです。
必死になってキーボードを叩いている側で、週刊誌を読んで笑っていたり、
隣の歓談室に置いてあるゲーム機器で遊んでいたりしている彼を見る度に、
自分のやっている仕事に非常に疑問を感じてやみませんでした。

そして、(私から見て)「不完全なゲーム」「未完成なゲーム」が、ついに
リリースされました。
結果は、書くまでもないものでした。

その後、社長から倒産の旨が伝えられたとき、非常に悔しかったのを
覚えています。確かに、先の企画兼ディレクターに責任の全てを押し付ける
つもりは全くありません。
その時の会社の上層部の、経営に対して危機感を持っていなかった事や、
我々とその企画兼ディレクターの間の問題を軽視していたのも原因と見て
間違いないからです。
ですが、私としては、もっと企画がディレクターとしても十分な人材だったら、
と思うと非常に悔しい思いでいっぱいでした。
会社が倒産した事よりも、自分がやったことに対する満足感が得られなかった
事に対して、というのも勿論ありました。


現在企画をされている方、企画を目指して頑張っている方に申し上げます。
あなたの作った企画を、まったく別の分野にいる方(ゲーム業界以外にいる方)に、
完全に、十分に理解されるよう、説明することができますか?
「100%は無理だ」
と思った方は、企画はされてもディレクターは絶対に引き受けないで下さい。
しかし、それでもディレクターを兼任されたい方は、自分が本当に作りたい
物は何なのか、そのはっきりした仕様やビジョンと細かいスケジュールが立て
られる勉強を是非して下さい。経験を積んでください。
それができないうちは、ディレクターは無理です。それだけディレクターの
役割は簡単なものじゃない、ということを自覚して欲しいと思います。

ゲームの製作会社の上層部にいらっしゃる方にもお願いします。
ミーティングを軽視しないで下さい。そして、ディレクターにはディレクターと
してふさわしい人材を、厳しい目を持って選んで下さい。絶対にその人選に
妥協はしないで下さい。

参謀と司令官はまったく別なのですから。
ほんの気持ち程度で結構ですので、現場の人間をもう少し大事にして下さい。

BLAST HAMMERでした。

長文、本当に失礼いたしました。