
[ このメッセージへの返事 ]
[ 返事を書く ]
[ home.html ]

投稿者:
じぇねらる @ proxy.kcn.or.jp on 98/1/16 16:26:45
In Reply to: 「守りし誓い立てし者・前編」(長文)
posted by じぇねらる @ proxy.kcn.or.jp on 98/1/16 15:53:14
暗い格納庫の中、しばしの沈黙が流れる。寂しそうな微笑みを浮かべる大神と、それを見つめるマリア。
マリア「隊長、それは・・・。」
大神「わかっているさ。だが、刹那の断末魔の叫び声が耳から離れなくてね。やっぱり隊長失格かな・・・。」
大神の寂しげな横顔に、マリアは一瞬ドキっとした自分を見つけ少し驚く。しかしそれよりも、大神の悩みが、かつての自分が捨てた悩みだということとその重みにショックを受ける。
そして、マリアは決断した。
マリア「隊長、私はかつて、数え切れないほどの命を奪ってきました。」
ふいに語りはじめたマリアに驚き、大神はマリアを見た。うつむいたその顔からは、表情を伺い知ることはできない。
マリア「最初は、大切な人を守りたかったからでした。それでも、恐怖がありました。でも、大切な人を失ったとき、私は命を奪うことも、奪われることも、なにも感じなくなりました。」
大神「マリア・・・。」
マリア「あやめさんに誘われて、帝都にやってきて、私はまた守るものを手に入れました。」
マリアの声が震えている。その手に握られているのは、例のロケットだろう。
マリア「そして私は今日、過去を振り返らないことを誓いました。今大切なものを守るために。でも・・・。」
大神「マリア・・・」
マリア「たとえ敵でも、命は命です。その重さを忘れる者に、平和を守るために戦う資格はないでしょう。あなたがそういう方だから、私達はあなたを信じ、戦うことができるのです。
大神少尉、あなたは・・・あなたはまぎれもなく、私達花組の隊長です。むしろ、隊員失格なのは私の・・・。」
最後は涙声になっていた。いや実際、マリアの頬は涙で濡れていた。そして大神は、この辛い告白をさせてしまった自分を帝国軍人として、いや男として恥じた。
大神「すまなかったマリア。俺は今まで、この心の痛みを忘れることばかり考えていた。」
マリア「隊長?!」
顔を上げたとき、大神は目の前に立っており、マリアの涙をそっとその指で拭う。そして、優しく微笑んだ。
大神「俺は君に誓うよ。この痛みとともに生きていく。そして、この平和を守ってみせる。なにより君たちを守ってみせるよ。」
マリア「隊長・・・・・・・・・・・はい!」
この日、大神一郎元海軍少尉は、真実、帝国華撃団花組隊長となった。

|