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編隊飛行(懲りないやつ) @ ppp038.vit.or.jp on 97/11/22 07:07:41
In Reply to: ハロウィン大戦〜ジャック・オ・ランタンの思い出1
posted by 編隊飛行(まだやってる?) @ ppp038.vit.or.jp on 97/11/22 07:05:32
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ハロウィン大戦〜
「ジャック・オ・ランタンの思いで」
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「アイリス、おじちゃんからキャラメルもらっちゃった。」
「ちゃんとお礼は言ったのかい?」
「うん。ありがとう・・っていったよ。」
大神は、既に通りの向こうを歩き出した男の後ろ姿へ向かって軽く会釈をした。
(よくハロウィンの習慣なんて知ってたな?誰なんだろう・・・)
彼が作家であり、小説「サクラ」で有名になることを大神が知る由もなかった。
「さっ、もう暗くなるから帰るよ。みんなもパーティーが始められなくてイライ
ラしてるだろうし。」
今日はハロウィン。だが、この日を祝う習慣は、まだまだ日本には定着してい
ない。今日で終わった秋公演の打ち上げをかねてハロウィンのお祝いをしようと
言い出したのは、アメリカに住んでいたことのあるマリアだ。クリスチャンであ
るアイリスも喜んでこの話に賛成した。ちょうど、フランスの両親からハロウィ
ン用のお面とマントがアイリスのもとに送られてきたことは、帝劇の全員が知っ
ていた。朝から公演が始まる直前までずっとお化けの格好をしていたからだ。
「面白そうだからやってみようじゃないか」
カンナの一言でハロウィン風打ち上げパーティーが開かれることになった。
最終日は昼公演のみ。みんな、パーティーの準備に忙しいのだが、どうしても
通りに出てお菓子をもらって歩くんだと駄々をこねるアイリスを連れ、大神が外
に出てきていた。
「マリア特製カボチャのパイがそろそろ焼き上がる頃かな?」
「うん。アイリス、マリアの作ったパイ大好き!!」
しっかりと手を繋ぎ、既に街灯の灯った大通りを歩く二人。
「どうだい?俺が作ったカボチャのランタンの出来は?」
「とってもきれい。アイリス、大事にするね」
「あはははは、本物のカボチャだから長持ちはしないさ。」
「いいの。アイリスの宝物だもん。」
「ご両親からもらったお面とマントを大切にしなくちゃね。アイリス」
「・・・・・。ねぇお兄ちゃん。トリック・オア・トリート!」
「え?なんだい?それ?」
「お菓子をちょうだい!じゃなきゃ、いたずらしちゃうよ。」
「えっ?いたずらって・・・何をするのかな?」
「ん〜とね・・・。アイリスがお兄ちゃんの恋人になってキスしてあげるの。」
ちょっとうつむき加減に少女が答える。
「ん?じゃ、ちょっと待ってね・・・。はい。キャンディーをあげるね。」
「・・・・・お兄ちゃん・・・・・。」
「どうした?アイリス、キャンディーは嫌いかい?・・・アイリス?・・・」
アイリスは下を向いたまま、しかし、肩だけが小刻みに揺れている。
「お兄ちゃん・・ア、アイリスを・・こ、子供だと・・・・」
アイリスの声は涙声に変わっていた。
「アイリスは、お兄ちゃんの恋人だと思ってたのに!!!」
大神を見上げたアイリスの目には、大粒の涙が浮かんでいた。
「お兄ちゃんは、アイリスをまだ子供だと思ってるんだ!!やっぱり、さくらや
マリアの方がいいんだ!!」
「お、おい、アイリス・・・」
「お兄ちゃんなんか・・・お兄ちゃんなんか・・・大嫌い!!
お兄ちゃんのバカ!!!!」
大神を突き飛ばすように、車道へ駆け出すアイリス。
(プ、プ〜〜ププ〜〜!!)
クラクションを鳴らし猛スピードで走って来る一台の蒸気自動車。立ちすくむ
アイリス。
「あっ!危ない!!アイリス〜〜!!」
大神の身体は自然に動いた。海軍で鍛えた肉体は、実戦で鍛え上げられた反射
神経に後押しされアイリスをかばうように車の前へと跳躍する。
「きゃぁぁ〜〜〜!!」
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