Re: ハロウィン大戦〜もう一つのエンディング



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投稿者: 編隊飛行 @ ppp009.vit.or.jp on 97/11/25 02:46:04

In Reply to: ハロウィン大戦〜ジャック・オ・ランタンの思い出2

posted by 編隊飛行(懲りないやつ) @ ppp038.vit.or.jp on 97/11/22 07:07:41

 クラクションを鳴らし猛スピードで走って来る一台の蒸気自動車。立ちすくむ
アイリス。

「あっ!危ない!!アイリス〜〜!!」

 大神の身体は自然に動いた。海軍で鍛えた肉体は、実戦で鍛え上げられた反射
神経に後押しされアイリスをかばうように車の前へと跳躍する。

「きゃぁぁ〜〜〜!!」

「アイリス〜〜!!あっ、あれ???」

 アイリスを抱きかかえた、と思った瞬間、その身体はすっと消えていた。宙を
掴む大神。ふと、目を上げると向こうの歩道にアイリスの姿が見える。テレポー
トだ。危険を感じたアイリスは、その瞬間テレポートで安全な場所へと避難した
のだ。

 (よかった、アイリス。無事だったんだ・・・)

 −−−ききっ〜!!ど〜〜〜〜ん!!!!−−−

 その瞬間、大神の身体は宙に舞った。

(ここは?・・・)

 無影照明が光っている。手術室のベッドの上のようだ。

「またかいな、大神はん。さすがに今度ばかりはもう無理やで。全身ぼろぼろや。
 人工骨格に強化筋肉・・・。心臓は蒸気ポンプを埋め込むとして・・・。問題
 は脳やなぁ。まだ小型蒸気演算機は精巧やないし・・・。記憶全てを入れ込む
 のは絶対無理や。脳だけでもなんとか使えればなぁ・・・。」

「改造や。改造。前回はできんかったけどなぁ。」

(や、やめてくれ〜!!紅蘭〜〜!!!!!)

「改造や。改造・・・・・・。もぎり君1号の完成やぁ・・・・」

「や、やめろ〜〜〜!!!」



「大神君・・・・大神君・・・・。」

(あっ?この声は・・・・・)

「大神君・・・・・。」

(あやめさん・・・?!)

「まだだめ。あなたはここに来るには早すぎる・・・。」

(あやめさん・・・。俺はあなたのことを・・・)

「だめ、私のことを想っては・・・。帰れなくなる・・・。ここはまだあなたが

 来るところじゃないの・・・。

(あやめさん・・・。ここは・・・天・・・)

「さあ、思い出すの・・・。あなたが守らなければいけない人のことを・・・。

 あなたを待っている人たちのことを・・・。さあ・・・。」

(うっ・・・、さくら君、カンナ、すみれ君、マリア、紅蘭、アイリス・・・
 花組のみんな・・・・)

「帰りなさい・・・・大神君・・・・・みんなのもとへ・・・・」

 あやめの微笑みが一瞬だけ見えたような気がした・・・。





「き、気がつきましたね。大神さん。」

「えっ?・・・・あっ、さくら君。・・・ここは・・・・・??」

「帝劇の医務室です。みんな心配してたんですよ。よかった・・・。」

「・・・さくら君・・・。」

「3日も眠っていたんです。怪我はかすり傷ですんでたのに・・・。頭を強く打
 っていたらしくて・・・。もうずっと眠ったままになっちゃうんじゃないかっ
 て・・・・・・あっ、みんなを呼んできますね。」

 病室を駆け出していくさくら。

「3日か・・・。どうやらさっきのは夢だったらしい。」

  −−とんとん!!−−

「ん?」

「お、お兄ちゃん・・・。」

「あ、アイリス・・・。無事だったんだね。よかった。」

「お、お兄ちゃん・・・ごめんなさい・・。アイリス、お兄ちゃんが死んじゃっ
 たら・・・、ぐすん・・・」

「あははは。大丈夫だよ。お兄ちゃんは不死身だ。心配しなくてもいいよ。」

「・・・ぐすん・・・お兄ちゃん・・・。」

 ふと、枕元に目をやると、そこにはぴかぴかに磨かれたカボチャのランタンが
置かれていた。

「カボチャのランタン・・・・。」

「アイリスね、毎日このランタンにお祈りしてたの。お兄ちゃんが早く目を覚ま
 しますように。早く元気になりますようにって・・・・。」

「アイリス・・・・」

「お兄ちゃん・・・。アイリスやっぱり子供だね。急に飛び出しちゃって、お兄
 ちゃんに怪我させちゃって・・・。」

「アイリス・・・」

「アイリス、早く大人になりたい・・・。大人になってお兄ちゃんと・・・。」

「アイリス・・・・。今のままでも・・・その〜・・・。素敵だよ・・・・」

「お兄ちゃん・・・?」

「アイリス、5年・・・いや10年だろうが俺は待ってるよ。アイリスが大きく
 なるのをね。そして・・・その時までは・・・。」

「お兄ちゃん・・・。浮気しちゃだめよ!」

「えぇっ!?」

「冗談よ、冗談。いいの、お兄ちゃんが他の人と一緒になっても・・・。でもね、
 アイリスが大人になって現れたときに、お兄ちゃんが何故それまで待てなかっ
 たんだろう?って思うくらい素敵なレディになるの。うふっ。」

「よし。それならお兄ちゃんも待つぞ。でも、アイリスが素敵な女性になってな
 かったら、別の女の子と結婚するからな?」

「大丈夫だもん。あはは。」

「はははははは」

 廊下からバタバタと近づく足跡が聞こえてくる。紅蘭やカンナ、すみれ、マリ
ア、さくらの声と共に。

(いつもの帝撃だ・・・。俺は戻ってきたんだ。そう、まだまだ俺には守るもの
 がある。いつかはあの人のもとへ・・・。だが、それはずっと先だ。そう、こ
 こに彼女たち、花組のみんながいる限り・・・。)

 窓際のテーブルの上に置かれたカボチャのランタンが、いつまでも微笑んでい
るように見えた。

       〜FIN〜