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VR @ 202.237.42.71 on 97/11/11 13:54:19
In Reply to: Re: ハロウィン大戦・由里編/中編(長文)
posted by VR @ 202.237.42.71 on 97/11/11 13:15:54
「あれ?由里さん、お帰りなさい。何処に行ってたんですか?」
帝劇に入るなり、声をかけてくる人物がいる。椿だ。
売店を整理する手を休めることなく、由里の方に顔を向けた。
「ん、ちょっとね。実家に用事があって。」
「そうだったんですか。もう、帝劇の中は大忙しなんですよ。
ほら、今日はハロウィンの……。」
「ああ、そうか、特別公演だったわね。ごめん、すぐに手伝うわ。」
「え?ああ、いいんですよ。そんな、帰ってきたばっかりで……。」
由里は愛想良く笑顔で返した。
「いいのよ。体動かしていた方が調子いいみたいだし。」
言いつつ事務室へと向かうと、二階から降りてきた紅蘭と
目が合った。
「おかえり、由里はん!」
「……ただいま、紅蘭。」
二人は笑顔をかわすと、刹那に表情を切り替えた。
「……どうだった、花やしき支部の方は?」
紅蘭は沈黙の後、深いため息をついた。
「……ウチの研究仲間でも、何の部品か判断しかねるもんが
最近、大量に流れてきとる。確信は持てんけど……少なくとも、
光武の部品じゃないことだけは確かやで。」
「……そう……。」
「んで、由里はんの方は?」
沈黙があった。あまり答えたくは、ない。
「……想像通り、やったっちゅう訳か。」
「ふふ……貴方には、かなわないわね。やっぱり。」
由里はいつもの笑顔に戻った。紅蘭もそれに答える
かの様に、笑みをうかべた。……由里と同じ意味での笑顔だ。
「あんたの考えくらい、お見通しや!……まあ、他のみんなには、
あくまで戦闘に集中して欲しいしな。……こんな苦労するのは、ウチらだけで十分や。」
「損な役回りよね……。うちの予算が何処から下りてくるのか、なんて、私も
考えたくないわ。」
紅蘭は、手をぽんと叩いた。言うまでもなく、切り替えの合図だ。
「ほんならこれくらいにして、と。由里はん!さっそくやけどこれ、
頼むで!子供たちが、お菓子配んのをまっとるわ!」
差し出された黒いマント、そして南瓜のお面を受け取り、
由里は紅蘭の背中に声をかけた。
「じゃあね、紅蘭。」
「ん、また後でなー!」
答えて紅蘭は、舞台の方向へと消えていった。
『こんな苦労をするのは、ウチらだけで十分や……。』
皮肉にも身に付いてしまった、米田にも見破れない笑顔。
その持ち主は、ゆっくりと南瓜の面を頭にかぶった。
「そうよね、紅蘭……。」
子供たちが待つロビーへと、彼女は歩き始める。
「……道化師は、笑顔の下を見られたら終りだわ……。」
今、彼女はどんな顔をしているのか……。
仮面の下の素顔は、外からうかがえるはずもなかった。
(終)
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