第二幕



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投稿者: ditto @ tpro1.tky.3web.ne.jp on 97/12/14 00:24:01

In Reply to: 第一幕

posted by ditto @ tpro1.tky.3web.ne.jp on 97/12/14 00:22:39

(第二幕)

「これは、中町殿ではござらぬか。」
副島の話によれば、名芸会に当然入っているはずの中町だった。これまた高名な中町藩藩主。この中町という人物、一癖も二癖もあることでも業界では有名だ。
いままであまり中町とは親交のなかった宮道だが、先程からのもてはやされ方から、このような大物から声をかけられることに違和感を感じなくなってきていた。

藩主・中町(以下)「宮道殿、もうお帰りでござるかな?」
「ええ。上様へのお目通りも無事に済みもうしたし、まだまだ大きな仕事の最後の詰めが残っておりまするのでな。」
「おお、例のプロジェクトでござるな。」
この中町までもが具卵出亜を知っている。宮道は満足げに、そうだとうなづくと軽く会釈をして立ち去ろうとした。

「まあまあ、そう急がずとも良いではなかろうか。いや、あの出井伊殿が、お越しじゃ。ここは挨拶の一つもせねば失礼にはあたらぬか?」
「出井伊殿が!?」
大老・出井伊直弼。ともすれば、反将軍派とも目される人物だ。
「さ、左様でございまするか。...大老様が。しかし、私はまだ大老様とは面識がござらぬのだが。」
「ご案じめさるな。不肖この私目が、紹介仕る。」
「忝のうござる。」
忠誠心の厚い宮道。普段ならば、いくら大物とは言え、そのような黒い噂のある人物とは縁も関わりも持たぬのであるが、...この日ばかりは多少違っていた。宮道は、大老からも他の藩主と同じような賞賛の辞を頂けるのではないかと期待していたからだ。
大老の部屋に通された宮道は、早速挨拶を交わした。
「お初にお目にかかります。芸夢熱藩藩主の宮道でございまする。」
しかし大老の口から出た言葉は、以外であった。

大老・出井伊(以下)「はて、芸夢熱藩?聞いたことがないな。」
大老は、歳とはいえ、まだ惚けるには早い。ただ、単純に知らなかったのである。拍子抜けする宮道に、中町はすかさず助け船を出した。
「実は、彼こそ今をときめく人物でござりまする。日の本史上最大とも言えるソフトプロジェクトを進展中なのでござります。」
「おお、左様か。これは失敬いたした。ところで、...宮、..宮道殿と申したかのう...。」
「はっ!なんでございましょうか?」
「そちは、占いを信じるたちでござるかな?」
「う、占いでござるか...。まあ、それは当たるも八卦、当たらぬも八卦。つまるところ良い占いが出たときのみ当たるものと信じる方でござる。」
「それは良いこころがけじゃ。実は最近、よく当たると評判の占い師がおってのう。えー、大崎の父とかいう占い師でござったか。」
「お、大崎の父!?」
「左様。いわゆる陰陽道に占星学をも取り入れた占いをするということで評判じゃ。そちも一度くらい占って貰ってはどうかの?」
「は、はあ。機会がありましたら。」
「おお、そうか。」
「出井伊様、そろそろご出立の時間では?」
「そうか、もうそんな時間か。こりゃ、宮道とか申したかの。また、いつでも遊びにくるがよい。」
「お、恐れ入りまする。」
時間は短かかったが、始終対面に緊張していた宮道であった。しかし、大老の口から具卵出亜の話がでなかったのには、流石に落胆の色を隠せなかった。