Re: 学園モノ 無間学園 4



[ このメッセージへの返事 ] [ 返事を書く ] [ home.html ]



投稿者: 勇者ああああ @ 210.156.162.137 on 97/8/08 08:45:50

In Reply to: Re: 学園モノ 無間学園 3

posted by 勇者ああああ @ 210.156.162.137 on 97/8/08 08:44:43


 雨は、いよいよ本降りになってきたようだ
った。
 染み入るような雨音が、校舎の周囲に茂っ
ている森林から、聞こえだしている。
「今日も一人」
 深月紗代が、不思議と澄み切った顔で、そ
んなことを呟いている。
「だから、泣いているのね」
 紗代は、保健室内の隔離されたベッドの上
から、雨音と話すように、細く、抑揚もない
声で、一人、呟いている。
「深月さん、具合はどう?」
 保健委員の笈川祐紀が、カルテその他一式
を抱えて入ってきた。
「今日は誰」
 紗代は、祐紀を見向きもせずに、雨にうな
垂れている木々を眺めたまま、呟くように聞
いた。
「私。笈川」
 紗代のそんな態度には慣れているのか、祐
紀は、嫌な顔もせずに、紗代の細い肩に、カ
ーディガンをかけてやった。
「今日は誰」
 紗代は、無表情にもう一度、聞いた。
「天羽、冬哉くん」
 祐紀は、観念したように呟いた。この事を、
紗代には隠しきれるわけがない。
「何年生」
「一年生って、言ってたけど」
 祐紀は、体温計を取り出すと、軽く振った。
「どんな子」
 紗代は、外を眺めたまま、聞いた。
「可愛らしい男の子だって、はなし」
 祐紀は、慣れた手つきで、体温計を紗代の首
そでから、差し入れた。
「彼が決めたの」
「さぁ」
 祐紀は、そんなに詳しいわけではない。
「彼、戻ってこないわ」
 紗代は、無表情のまま、そう呟いた。
「どこまで行っても終わりがないもの」
 紗代の瞳が、揺らいだ。
「紗代さん」
 祐紀は、はっとして、紗代を見た。
「桜の花びらが、ただ静かに、ただ静かに、
降り積もって行くだけだから」
 涙が、その頬を伝っていた。