Re: 学園モノ 無間学園 5



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投稿者: 勇者ああああ @ 210.156.162.137 on 97/8/08 08:46:59

In Reply to: Re: 学園モノ 無間学園 4

posted by 勇者ああああ @ 210.156.162.137 on 97/8/08 08:45:50


「噂は聞いている」
〈学園法度一三条適用〉のプレートが、視聴
覚室の扉に下げられている。
「一年生、らしいな?」
 屈強そうな男子生徒が二人、その扉の両脇
を固めている。
「可愛いじゃない」
 室内には、くまなく暗幕が引かれており、
一切の外光が閉ざされていた。
「もう一年、待つ気はないの?」
 カタカタと、映写機が音を立てている。
「フン、奴の横にいるのは、お前の妹じゃな
いのか?」
 冬哉と葵が、一緒に登校する様子が、スク
リーンに映し出された。
「それは関係がない」
 スクリーン前に屹立していた、痩身の、眼
鏡をかけた男子生徒が、その言葉だけには、
即座に返答した。
「そうかな?」
 視聴覚室の最後列、即ち最高段に、ズラリ
と居並んだ者たちの口元が、一斉に歪んだ。
「そんな悠長なことを言っている場合ではな
いだろう、諸君!」
 痩身の男子生徒は、眼鏡をギラリと光らせ
ると、その外見からは想像もつかないような、
威厳に満ちた語気で、そう言い放った。
「我々に残された時間は、後わずかなんだぞ!」
 彼は、必死の形相で、そう叫んだ。
「しかし、奴がそれをやってのけられるのか?」
 一瞬、黙り込んだ連中が、再び口を開き始
めた。
「残された時間もわずかだが、チャンスもわ
ずかだぞ?」
「保障はあるのか?」
「保健室に、隔離病室をもう一つ、増やすつ
もり?」
「紗代のことは言うなッ!」
 再び、男子生徒の一喝で、視聴覚室は静ま
り返った。
「私は生徒会室に戻る」
 男子生徒は、部屋の真ん中の通路をツカツ
カと横切ると、視聴覚室の防音扉を開けて、
生徒会室へと、向かった。
「どう思う?」
 男子生徒が去った後、暗闇に居残った影が、
声をひそめて、密談を始めた。
「危険だな」
「焦っている」
「三咲くん」
 影の一人が、名前を読んだ。
「はい」
 カーテンの影から、ファイルを胸に抱いた
女生徒が、姿を現した。
「早く生徒会室に」
 影の一人が、急かした。
「期待してるわ、副会長さん」
 いそいそと部屋を出る彼女の背中に、影の
一人が、そう声をかけた。
「なんとか、やってみます」
 彼女は、俯いたまま、小さな声で返事する
と、ちょこんと頭を下げて、懸命に廊下を走
って、生徒会室へ向かった。
「奴を生徒会長にしたのは、間違いだったの
かもしれないな」
その足音を聞きながら、影の一人が、そう
呟いた。