第四幕



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投稿者: 遠山金三郎 @ tpro2.tky.threewebnet.or.jp on 97/8/02 23:32:17

In Reply to: 第三幕

posted by 遠山金三郎 @ tpro2.tky.threewebnet.or.jp on 97/8/02 23:28:15

(第四幕)

夏は日が長い。が、さすがに暮六つ半となる陽も落ち暗くなってくる。
とある村の娘「お願いです。もう少しまけていただけないでしょうか。」
八百屋の親父「さあ金のねえ奴は帰った、けえった。」
村の娘「ああ、痛い。」
「大丈夫かい?しかし、乱暴な親父だな。」
村の娘「いいんです。贅沢はできませんし。」
「そうかい。しかし、ここで出会ったのもなんかの縁だ、家まで送っていこう。」
村の娘「いえ、見ず知らずの人にそのようなことを。」
「まあ、いいからいいから。」
その娘の家は、村はずれのあばら屋だった。
娘の父・庄助(以下庄)「お唯。ん、そちらさんは?」
「こちらは金治さん。夜道は危ないからって、送って貰ったのよ。」
庄「それはそれは、唯が世話になりました。」
「いえ、通りすがったもので。」
庄「なにもねえところですまねえが、ゆっくりしていっておくんなせえ。」
...
「お父っつあん。芋粥ができたわよ。」
庄「すまねえな、兄さんさえいてくれたら。」
「それは言わない約束でしょう。」
庄「ああ、そうだったな。」
「兄さん?よかったら話を聞かせて貰えねえでしょうか?」
庄「いや申し訳ねえが、旅の人には関係のないことじゃから。」
...
「お父っつあんは、ああ言ったけど、あんた賞金稼ぎだろ。お願い兄さんを捜して!」
「訳がありそうだな。話を聞かせて貰えないか。」
「実は父はRPG欠乏症なのです。」
「RPG欠乏症!?」
「そうなんです。目黒の酢喰屋に良質のRPGがあると聞き、出かけたのが一年ほど前でした。」



唯の兄・長五郎(以下)「これでお父っつあんの病気も直せる。」
酢喰屋の店員「もし、そこのお方、このソフトはサターン体質の人には合いませんよ。いやこのソフトに限らず、うちのソフトはサターン体質の方向けではありません。」
「な、なんだって!?」
「それじゃあ、もうお父っつあんは!」
店員「もうしわけありませんが、他をあたって下さい。」
肩を落として店を出るところへ
謎の老人「RPGをお探しですか?」
「へえ、そうなんですが...家の父の体質に合うソフトが見つからなくて。」
老人「低尾の山にな。」
「へ、低尾の山?」
老人「万人向けのRPGの実を付ける木があるという。その木が10年振りに実を付けたという噂を聞いたことがある。ダメ元でいってみてはどうかのう。」
「へい、ありがとうございます。低尾山なら家の近くでございます。」
それで兄と二人で低尾山に行き、苦労のすえとうとうRPGの木を見つけたのですが、
「なんてこったい、実がひとつ残らずちぎられていやがる。」
謎の老婆「お前さん方。RPGを探しに来なすったのかい?そりゃ残念だったね、たったいま鬼が全部持っていったところだよ。」
「お、鬼が!」
老婆「この木はねえ。実を付けるは10年に一回きりなんだよ。」
「そ、そんなあ。」
老婆「どうしてもRPGが欲しけりゃ、鬼に頼んで分けてもらうこったねえ。なあに、人語は解するからね、誠意が通じりゃなんとかなるかもしれないね。でも命の保証はできないよ。」
「唯!決めたぜ。俺は鬼にあって話をしてくる。それまでお父っつあんを頼む。」

「そう言って兄は山の奥深く消えていきました。それ以来1年、帰ってません。村の人はきっと鬼に喰われたんだろうっていって探してはくれませんでした。でも父もあたしも兄はきっと生きていると信じています。どうか、兄を捜して下さい。」
「わかった。信じる心があれば、願いはきっと通じるよ。」