フライング、特別小説「3月3日」その2



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投稿者: Rudolf @ 202.250.122.225 on 98/3/02 17:04:17

In Reply to: フライング、特別小説「3月3日」その1

posted by Rudolf @ 202.250.122.225 on 98/3/02 17:02:58

 「大体、どんな発明をしていたのか、由里くん知らないかい?」

 「何でも、機械に知能を持たせるとか言う発明って言ってました。それなのに何故かナメクジを。」

 「それは、確かナメクジの脳細胞の働きを解明すれば機械に転用することができる、そうです。隊長。」

 「…どんな発明なんだか。」

 「行く行くは光武にまでその装置を付けて操縦者の補助機関にする計画だったそうですわ。ナメクジの脳みその助けなど借りてはこの神崎すみれの名も地に落ちますわ。」

 何もナメクジ自体が光武に付くわけでもないのだが。すみれに少々の理屈は意味を成さない。

 「光武の強化につながるから、というので許可したんだけど、甘かったわね。」

 あやめの後悔も珍しいが、珍しいからと言って事態が好転するはずもなかった。

 数分後、風組隊員が到着し、駆除作業が始まった。どういう手段を用いたのか、ものの1時間で終了の運びとなった。

 

 やっと自由のきく身になった大神は紅蘭を励ましに2階に上がった。

 「紅蘭、大神だけど。」

 「あ、大神はん。ちょっと待ったってや。」

 ドアを開けた紅蘭には悩んでいそうな節など欠片もない。最低でも大神にはそう思えた。

 「取り敢えず中入ってえや、散らかっとるけどな。」

 確かに、紅蘭の部屋の中には怪しげ、もとい、何に使うのかよく分からない機械や彼女の心血のこもった危険物、またもとい、発明品が今日も元気に散乱している。ここは我が領土と言わんばかりに。

 その中でも大神はなんとか自分の領土を確保して座ることができた。座るのもおっくうな部屋とは、それだけで恐ろしいが。

 「で、今日は何やの、大神はん。」

 そういう紅蘭の瞳には煌びやかさが点っていた。皆が口を揃えて言うとおり、本当に悩み、落ち込んでいるというのか。

 「あの、紅蘭が元気がないって聞いたものだから、見に来たんだけど。」

 「大神はんがうちを?いやー感激やわ。でも大丈夫や、うちはこの通り元気しとるさかい。」

 「そ、そうだね。邪魔だったかな。」

 「そんな事あらへん、大神はんが来てくれた言うだけでええねん。ほな、うちはこれからちょっとやる事があるさかい。」

 「あ、ああ。気を付けてね。」

 「おおきに。」

 そのままその場は引き下がった。別段心配する必要はない、と大神には思えた。