【正月大戦】『長雨』長文2



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投稿者: VR @ 202.237.42.70 on 98/1/30 09:51:58

In Reply to: 【正月大戦】『長雨』長文1

posted by VR @ 202.237.42.70 on 98/1/30 09:50:32


「じゃあ、手伝ってもらおうかしら。あとは
伝票を番号順に詰めるだけだから。……そうそう、
由里を見かけなかった?」
「えっ、由里さんなら……。」
「……ただいまー。」
「噂をすれば、ですね。由里さん、お帰りなさい。」

 噂の主は、小走りで戻ってきたのだろう、肩で
息をしつつ荷物を床に降ろした。

「……出かけてたの?この雨の中を?」
「……だって、今日じゅうに引き取りにこなきゃ、
処分するとか言うんだもん。いいかげん、印刷屋を
替えない?」
「あそこより安い所があれば考えるわ。」

 かすみが差し出した一杯のお茶で、由里は冷えきった
体を癒した。

「くうー、有難い!今はなにより、この一杯よね!
……あれ。この箱の山は何?」
「今、みなさんは帝劇の大掃除の最中なんですよ。
こんな雨じゃ、やることないからって。」
「ぎく。今、この雨の中を頑張ってお仕事してきた
哀れな少女を、その戦いの渦中に放り込んだりしない
……よね?」
「はいはい。宿直室にこたつが出してあるから、
とりあえず休んでおきなさい。」
「ここの片付けは、私が手伝いますから。」
「感謝!あとね、今持って帰ってきたポスターと
パンフレット、ゴミと間違えてダスト・シュートに
放り込まれないうちに倉庫に直しておいてね。
んじゃ、よろしく!」

 由里は体を震わせながら、宿直室へと駆け出して
いった。

「それじゃあ、私はこれを倉庫に持っていくわ。
椿ちゃん、伝票の方はお願いね。」
「はい。」

 常識で考えれば女一人には重すぎるであろう
その紙の束を、慣れた手つきでひょいと抱え
上げると、かすみは地下への階段を降りていった。