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VR @ 202.237.42.70 on 98/1/30 09:53:46
In Reply to: 【正月大戦】『長雨』長文2
posted by VR @ 202.237.42.70 on 98/1/30 09:51:58
地下は今使用中ではないので、暖房は切ってある。
さすがに少しひんやりとした空気だ。
こんな所に長居は無用とばかりに、少々荒っぽく
倉庫の扉を開けるかすみ。
その、瞬間。
「……!!」
冬の寒さではない、明らかに別の悪寒が走った。
「……まさか……!」
倉庫に立てかけてある角材を手に取ると、かすみは
その気配を感じた辺りに目を凝らした。
何かが、いる。
より強くその一点を見つめるかすみ。間合いを
詰めようと、彼女が一歩踏み出した刹那、『それ』は
影から舞う様に飛び出した。
猿ぐらいの大きさもある、降魔。
「くっ!」
彼女の予想は的中した。ある意味、外れたとも言える。
こんなにも大きい降魔だったとは、予想外だったのだ。
しかし、彼女は冷静である。
不快な歯音を発ててかすみに飛びかかろうとする
降魔は、彼女から見れば雑魚にすぎなかった。
「はっ!!」
一直線に向かってくる降魔に、気合いを込めた
角材での一撃を見舞う。それだけで終わりであった。
不快な肉塊は四散し、倉庫の壁に緑色の染みを作る。
しかしそれもすぐに消え去り、またそこに静寂が戻った。
「……結界が、弱まっている……!?」
そう、降魔が予想より大きかったことなど問題では
なかった。これぐらいの大きさならば、銀座の町でも報告されて
いる程度のものだ。問題は、強力な結界が張られているはずの
帝劇に、潜りこんだか、あるいは地面から湧いて出たのか、
この程度の雑魚までが忍んでいた、という事実であった。
無言で角材を元の場所に立てかけると、かすみは
本来成すべき仕事を片付け、静かに倉庫の扉を閉じた。
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