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VR @ 202.237.42.70 on 98/1/30 09:55:05
In Reply to: 【正月大戦】『長雨』長文3
posted by VR @ 202.237.42.70 on 98/1/30 09:53:46
「……倉庫、散らかってました?」
問いかける椿に、彼女は返事が遅れた。
「えっ?」
「いや、時間がかかってるからそうかな、と思って。」
どうやら先程の降魔の断末魔も、激しい雨音に
かき消されたらしい。正月早々、心配事を持ち出し
たくもなかったのだろう、
「ちょっとね。また倉庫も、大掃除しないと。」
彼女は嘘をつく事にした。別段隠す必要はない、
いや、話しておかねばならない事柄だっただろう。
しかし彼女は、一時的かもしれない平和を楽しむ
人間に不快な表情をさせる気には、どうしても
なれなかった。
「雨、まだ止みませんね……。」
椿が窓の外を眺めながらつぶやく。
しかしかすみは、先程の物音を消してくれた
この激しい雨に、少し感謝することにした。
新たなる闇が帝都に迫っている。その事実を
誰よりも早く予見したのは、今日この日の
かすみだったのかも知れない。
「……『今年もよろしく』……って事よね……。」
先刻の降魔の姿を思い出し、かすみは軽く
舌打ちをした。
「…………冗談じゃないわ。」
それでも、ヤツらはやってくる事だろう。
……次のサクラが咲く頃に。
―― 続く ――
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