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編隊飛行 @ ppp037.vit.or.jp on 98/1/30 06:48:32
In Reply to: 【正月大戦】〜新しき朝〜その1(長文)
posted by 編隊飛行 @ ppp037.vit.or.jp on 98/1/30 06:46:12
「紅蘭、爆竹なんて鳴らしていったいどうしたんだ?」
「えっ?」
振り向く紅蘭。
「(うっ)・・・・きれいだ・・・。」
大神の口から思わず言葉が漏れる。紅蘭もまた、いつもの紅蘭ではなかった。
真っ赤なチャイナドレスではあったが、裾の方には金糸銀糸で刺繍された大輪の
花が光っている。髪もいつもの三つ編みお下げではなく、頭の両サイドで丸くま
とめられ、中央には金色の大きな髪飾りが光っていていかにも中国風な感じなの
だ。また、顔にも珍しく化粧を施しているようで、いつもつやつやと輝いている
唇が、口紅によって更に輝きを増していた。
普段の紅蘭が、健康的でどこか少年的な匂いのする美少女であるとすれば、今
日の彼女はどことなく妖艶で、でも、まだまだ大人にはなり切れてない清楚さを
だだよわせた美少女といったところだろうか。
(眼鏡がなければもっと美人なんだろうなぁ・・・・)
「ん?どうしたんや、大神はん。ウチの顔になんかついてる?」
「い、いや。その・・・。あまりきれいだったから・・・。」
「い、嫌やわぁ・・・。」
照れたのか、紅蘭の顔がみるみる朱に染まっていく。
「ほ、ホントきれいだよ。」
答える大神の顔も既に真っ赤である。
「え、えっとなぁ・・・今日は・・・春節のお祝いなんや。中国の正月。」
紅蘭の声はうわずっていた。照れを隠すためか口数が多くなっていく。
「中国ではなぁ、除夜の鐘が鳴り終わると一斉に爆竹を鳴らすんや。去年の悪い
運気を全て吹き飛ばして、新しい神様を迎え入れるんや。今年は良いことばか
りが起こりますようにって。」
「そうか。中国では旧暦で正月を祝うんだったね。」
「そうや。春節のお祝い。今日から元宵節まで続くんや。新年初めての満月の日。
町には灯籠の光があふれて、龍踊りが練り歩くんや。音楽は鳴り響いて、それ
に爆竹の音。楽しかったなぁ・・・。」
子供時代を思い出しているのだろうか。紅蘭の目は遠く宙を眺めるようであった。
「今日は除夜。明日の朝までこのろうそくの火とお香が消えないように守らない
かんのや。そして、朝、本当の新年を迎えるんや。」
「ふ〜ん。そうなんだ。だったら俺も朝まで付き合うよ。」
「えっ?ホンマか?ウチ、実をいうと一人で起きとくのはちょっと寂しかったん
や。大神はんが一緒に居てくれはるなんて・・・。なんか夢のようやなぁ。」
紅蘭の顔は笑みで大きくはじけ、まるで大輪の花が咲くようにきらきらと輝き
を帯びたようだ。あまりの美しさに彼女の顔を直視できなくなった大神は、ベッ
ドの端の方に腰を下ろし、小さく燃えるろうそくを見つめる。
「こ、この火を絶やさないようにすれば良いんだね?」
「そうや。守歳の習慣なんや。」
紅蘭も大神の横に寄り添うように腰をおろす。
「きれいやなぁ・・・。」
「ああ。本当に・・・。今日の紅蘭はとてもきれいだ。」
「えっ?・・・はははは。照れるやない・・・。ウチ、ろうそくの火がきれいだ
って言ったのに・・・。」
紅蘭の頭がそっと大神の肩へと寄せられる。香の香りが漂う。緩やかに揺れる
ろうそくの火が、二人の影を一つに変えていく。そして寄り添う二人のそばを時
間だけが静かに流れていった。
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