【正月大戦】〜新しき朝〜その3(長文)



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投稿者: 編隊飛行 @ ppp037.vit.or.jp on 98/1/30 06:50:48

In Reply to: 【正月大戦】〜新しき朝〜その2(長文)

posted by 編隊飛行 @ ppp037.vit.or.jp on 98/1/30 06:48:32


「そろそろ、ろうそくを替えなくちゃね。」

 どのくらいの時が流れたのだろうか。揺れるろうそくの火を見つめていた大神
は、独り言とも紅蘭への問いとも思える言葉を発して傍らに寄り添う紅蘭を見や
る。

「紅蘭・・・。眠っているのか。」

 大神の肩に顔を寄せ、少女は静かに寝息をたてていた。大神は、紅蘭の眼鏡を
外してあげると、肩を抱き、そっと身体を横たえさせる。そして、両の腕で紅蘭
を抱きかかえ、きちんとベッドの上に全身を載せた。

(眼鏡を外した紅蘭・・・。きれいだ・・・。)

 少女は美しかった。あまりに見つめていると、自分が何をしてしまうのか怖か
った。大神はろうそくの火を新しいものに移し替えると、また一人、静かに炎だ
けを見つめていた。



 いつの間にか、窓の外は白い輝きを帯びていた。新年の朝がやってきたのだ。
短くなったろうそくには、まだかろうじて炎が揺れていた。

(ん・・・。朝か?いつのまにか眠ってしまったようだ。んん〜〜ん)

 大神は、大きく伸びをした。その気配で紅蘭が目を覚ます。

「ん〜ん・・・。あっ、ウチ、眠ってたんかいな?大神はん。」

「おはよう、紅蘭。」

「起こしてくれたら良かったのに・・・・。」

「気持ちよさそうに眠っていたからね。起こすのも悪くって・・・。」

「は、恥ずかしいなぁ・・・。寝顔見られてたんやなぁ・・・。あっ!うちの眼

 鏡・・・。」

「ここにあるよ。はい。」

 大神から受け取った眼鏡をあわてて掛ける紅蘭。

「新年、あけましておめでとう。紅蘭。」

 その姿を見つめながら、大神が声を掛ける。

「あっ、おめでとう・・・。クゥォンシィ・ハッツァイ」

「えっ?」

「あ、中国語のおめでとうや。恭禧発財(クゥォンシィ・ハッツァイ)。」

「そうか。えっと・・・キョンシィ・・・。」

「はははは。クゥォン・シィ・ハッ・ツァイ。恭禧発財や!!。」

「恭禧発財(クゥォンシィ・ハッツァイ)。!!新年おめでとう!!」

「おめでとう。大神はん。」

「じゃ、朝になったから俺は部屋に戻るよ。」
「ホンマ、おおきになぁ。大神はん。」

「いいんだよ、紅蘭。じゃ、おやすみ・・・って朝の挨拶じゃないね。」

「ははは、そうやね。あっ!ちょっとまってんか?」

「ん?」

「これ、ウチからの圧歳銭・・・お年玉や。」

 紅蘭は大神に抱きつくと、ほっぺたにキスをした。

(てへへ・・・・・・・・・(*^^*))

 突然のキスに、大神の顔は真っ赤になった。紅蘭も慌てて大神から離れ後ろを
向いている。やはり恥ずかしさのせいで顔を紅潮させているようだ。後ろからか
すかに見える耳まで赤く染まっている。

「そ、それじゃ、おやすみ。紅蘭。」

 大神は大慌てで扉を開けると、廊下へと飛び出した。

 旧暦、新年の朝。若い二人の希望に満ちた年は始まったばかりである。