ザ・黒之巣会「又丹の憂鬱」 2



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投稿者: かとおおお @ 202.228.225.73 on 98/1/16 19:02:49

In Reply to: ザ・黒之巣会「又丹の憂鬱」

posted by かとおおお @ 202.228.225.73 on 98/1/16 18:59:32

又丹が目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋の中だった。

「あ、気がついたみたいやな。アンタ、大丈夫か?」
「……こ、ここは?」
「ここは大帝国劇場の宿直室や。アンタ、帝劇の玄関の前で倒れてたんやで。ウチが見つけたからええようなものの、あそこでずっと寝とったら蒸気自動車にひかれて、今ごろ天国行きや」
「何、帝劇の中? ……くくく、これはいい。労せずして本拠地の中へ入れるとは……。
 娘! 貴様は何者だ!?」
「? ウチは花組の李紅蘭や。よろしゅうに」
「なにィ、花組だと? 貴様も黒之巣会を無茶苦茶にする輩の片われか!?
死ねいっ!!」

又丹はがばっとはね起きると、紅蘭につかみかかろうとした。
だが、その動きは途中でピタッと止まってしまった。

「くっ、どうしたことだ? 体がうごかん!」
「アンタなあ、まだ起き上がったらアカンのや。せっかくパジャマ着てんのやから、おとなしゅう寝とりや」
「何、パジャマだと!?」

見ると、又丹はいつの間にか派手なピンクでパンダ柄のパジャマを着せられていた。

「な、なんだ、これは?」
「それは、ウチの発明した『あやつりくん1号』内蔵型パジャマや。ちなみに1号ちゅうのは宴会仕様で、それを着たもんはどんな芸でもできるようになるで! ちょっとやってみようか。えい!」
「あ、さて、さて、さては南京たますだれ!」
「うまいうまい。次はどじょうすくいや」
「あらえっさっさ〜」
「お次は海老一染之助・染太郎や。それっ!」
「おめでとうございまーす。はっ、はっ、回った回った。回りました〜」
「あはは。なっ、オモロイやろ?」
「いいかげんにせんか!」
「あっ、もう時間ぎれや」
「時間切れ?」
「ウチの発明は最後に爆発するんがお約束や。その時間が来たっちゅうわけや。ホナ、さいなら〜」
「あ、ちょっと待て! 爆発だと?」

カチカチカチカチ……(時を刻む音)

「うわーっ! 助けてくれーっ!!」

ドッカーン!!



「あら、紅蘭。どうしたの?」
「あ! あやめはん。この男な、『あやつりくん1号』の爆発音再生機能で失神してしまいよったんや。ホンマ冗談通じん奴やで! これからどないしょう?」
「そうね。身元がわかればいいんだけど……。あら、これは何かしら?」
「なんやて……『帝劇ファン倶楽部入会申込書』?」
「日本橋支部のハンコが押してあるわ。入会しに行くつもりだったんじゃない」
「なんや、ウチらのファンやったんか。よっしゃ、ウチがその日本橋支部まで連れてったろ。蒸気バイクでひとっぱしりや!」
「頼むわね、紅蘭」


明くる日、帝都・日本橋。帝劇ファン倶楽部日本橋支部(元黒之巣会本部)。

又丹がふとんに寝ている。

「う〜ん……さくら……紅蘭……許さんぞ……う〜ん……」

「昨日からずっとうなされてるわね」
「又丹はさくらと紅蘭のファンだったのか……」
「あやつもこれで入会資格十分じゃのう」
「うがっ、俺はすみれ様の方がいいぞーっ!」


かくして又丹も無事『帝劇ファン倶楽部』に入会できて、めでたしめでたし、ですね!

「どこがやねん!?」
「あっ、又丹。紅蘭の口調、移っちゃてる」


(完)