Re: 【正月大戦】〜すみれ〜その2(長文)



[ このメッセージへの返事 ] [ 返事を書く ] [ home.html ]



投稿者: 編隊飛行 @ 202.221.190.166 on 98/1/08 21:24:42

In Reply to: 【正月大戦】〜すみれ〜その1(長文)

posted by 編隊飛行 @ 202.221.190.166 on 98/1/08 21:23:06

「ふぅ、やっと終わった。開場1時間前か。間に合ってよかった。しかし、凄い
 数だったな。」

「どういたしましたの?少尉。」

「あ、すみれ君。きみへの贈りもだって。すごい花の山だよ。」

「ふ〜ん。」

 すみれはなんの感慨も示さない。

「嬉しくないのかい?」

「嬉しくなどありませんわ。この花は全て『神崎財閥のお嬢様』に贈られてきた
 もの。本当の『私』に贈られたものなど1本もございませんから・・・・。毎
 年の事ですからもう慣れておりますけど。」

 すみれの言葉に、大神は花に添えられた札を見た。
 【神崎すみれ様江〜神崎重工重役会一同】
 【神崎すみれ様江〜三菱銀行頭取○○○○】
 【神崎すみれ様江〜住友銀行頭取○○○○】
 三井、安田といった名前も見える。よく見ると『内閣総理大臣』からも来てい
るではないか。

(なるほど。神崎財閥に対する企業からの贈り物か・・・・。確かに、すみれ君
 が嘆くのも無理はないかな・・・・。おや?これは?)

 大神の目に入ってきたのは、『神崎』姓の多さだった。

(神崎操、光軒、つみれ、秋桜、するめ、山女・・・・。たくさんきてるなぁ)
「すみれ君、この神崎姓の多いのは?」

「それは遠い親戚筋ですわ。下請け企業の社長に納まってる方々のご子息、ご令
 嬢・・・・。でも、会った事もない人々・・・・。みんな本家とのつながり強
 くする ことを望むだけ。結婚、融資、神崎財閥の一人娘としてしか価値のな
 い私。 この中に心から祝ってくれる方々が何人いっしゃるのかしら・・・・。」

(はぁ・・・。なんか気まずい雰囲気になっちまったなぁ・・・・)

 すみれの気持ちを考えると、これ以上花について話題にするのはまずい。大神
は言葉を探した。

「ところで、もうすぐ開演だろう?用意はいいのかい?」

「そうですわね。そろそろ楽屋へ戻りますわ。あっ、少尉。この花、全部処分し
 ておいて下さいな。ごみとして捨ててもかまいませんわ。」

「えっ?ゴミ?もったいないよ。だって、蘭とか高そうな花ばっかりじゃないか。」

「温室で大事に育てられた花・・・・。私への当てつけとしか思えませんわ。」

「げげっ!(相当ひねくれてきてるなぁ・・・・。どうしようか・・・・)」

 大神は必死で考えた。

「そうだ。今日のお客さんに持って帰ってもらおう。帝劇のトップスター『神崎
 すみれ』の誕生日を祝って逆プレゼントってのはどうだい?」

「まぁ。いいですわねぇ。そうですわね、自由に持って帰っていただいてくださ
 いな。」

 すみれの顔に、はじめて笑みが浮かんだ。

「では、私は楽屋へ戻りますわ」

「じゃ、舞台、がんばってくれ!」