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編隊飛行 @ 202.221.190.166 on 98/1/08 21:28:39
In Reply to: Re: 【正月大戦】〜すみれ〜その3(長文)
posted by 編隊飛行 @ 202.221.190.166 on 98/1/08 21:26:56
「すみれ君、どうしたんだい?」
「あ、少尉。このお花を部屋に飾りたいのですけど・・・・。運ぶのを手伝って
いただけません?」
「いいけど・・・・。さっきは花なんて捨ててしまえって・・・・。」
「あら。このお花はわたくしのファンの方々がわざわざ持ってきて下さいました
もの。先ほどの花とは訳が違いますわ。」
「そうか。そうだね。」
「やはり、お客様があっての花組。ファンの方々の暖かい気持ちをないがしろに
するわけにはまいりませんわ。」
「へぇ〜〜。すみれ君も良いことを言うじゃないか。ただの我が儘なお嬢様とは
違うというわけだ」
「少尉!怒りますわよ!」
言葉とは裏腹に、照れのためか少し顔を赤らめたすみれの口調は、怒るどころ
か甘えるような感じでさえあった。
「ははは、冗談だよ。さぁ、部屋へ運ぼうか。」
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すみれの部屋。
「でも、この花、貧弱なものばかりだなぁ。」
花瓶に生けるすみれの姿を眺めながら、大神はつぶやいた。確かに、水仙や寒
椿、菊などの庶民的な花しかない。しかも、花屋で買ってきたような包装やリボ
ンは皆無である。ひもで簡単に縛ったものや新聞紙に包まれたものなど、プレゼ
ントというにはみすぼらしいものばかりだ。
「しかたがありませんわ。この時期には花屋の店先には葬儀用の花以外は1本も
残ってないと言われますから。」
「えっ?」
「企業が帝都中の花を買い占めてしまいますの。神崎すみれのお誕生プレゼント
のために・・・・。」
「はははは。凄い冗談だな・・・・。」
花など買うことのない大神は知らなかった。この話が本当であることを。
「このようなお花で十分ですわ。きっと、庭先から慌てて摘んできたものでしょ
う。皆さん、恥ずかしそうに差し出していらっしゃいましたから。でも、豪華
な花よりもよっぽど気持ちがこもっていて嬉しいですわ。」
「そうだね。君の誕生日をどうしても祝いたい。そんな気持ちがあふれかえって
いるね。」
「さぁ、終わりましたわ。」
「じゃ、俺は部屋へ帰るから。誕生パーティーは千秋楽の打ち上げの日にやるん
だったね。」
「ええ。派手にやっていただきますわよ。」
「あぁ。楽しみにしておいてくれ。それじゃ。」
「少尉。忘れていることがおありではございませんの?」
「ん?忘れ物・・・・。あっ、そうだ。昼間、ファンの人からこれを預かっていたん
だ。はい。それじゃ、おやすみ。」
すみれに懐から取り出した封筒を渡すと、大神は部屋を出ていった。
「もう、少尉ったら・・・・。本当は、少尉に『誕生日おめでとう』って云って欲し
かったのに・・・・。」
たった今大神から貰った封筒を開ける。中には1枚のカードが入っていた。白
いカードには可憐な『すみれ』の押し花。そして簡単なメッセージ。
『愛するすみれさん江〜お誕生日おめでとう。 大神一郎』
カードを見つめるすみれの顔は、今日一番の笑みで溢れかえった。
「ふふふ。少尉ったら。ホントに照れ屋さんなのですから。」
一番欲しかったもの、愛する人から貰ったお祝いの言葉をいつまでも飽きるこ
となく見つめるすみれだった。
=======完========

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