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かとおおお @ 202.228.225.68 on 97/12/21 09:44:53
[前回までのおはなし]
大神一郎は帝劇の元・専業モギリ。晴れて団員募集テストに合格し、花組の隊長なった。だが、舞台を全く知らぬ大神に次々と試練が襲いかかる……。
「え〜、では次の舞台の配役を発表する。まず主役は……大神、おめえだ! がんばれよ」「すごーい、初舞台でいきなり主役ですね、大神さん」
「おにいちゃん、カッコイー!」
「え〜、次にヒロインだな。カンナ、おめえと…」
「やったぜ! よぉ、隊長。がんばろうぜ!!」
「こらこら、まだ話は終わっとらんぞ。ヒロインは……カンナとすみれのダブルキャストとする!」
「ええっ!?」
「なんですって!?」
「……マリア、ダブルキャストってなんだい?」
「あの二人が、同じ役を交代で演じるんですよ」
「そのとおりだ。初日はカンナ、2日目はすみれ。以後、一日毎に交代して、千秋楽はすみれの番とする」
「すると、俺の代わりをするのは……?」
「何ねぼけてんだ。おめえは一人でやるんだよ!」
「いいっ!? そんな、無茶な」
「なにが無茶だ。カンナとすみれ、両手に花じゃねえか。まったく、俺が代わってやりてえぐらいだよ。
ああ、その3人は残って稽古の打ち合わせをすること。わかったな!」
「わたくし、今回の配役、納得がいきませんわ」
「すみれくん……」
「主役は、この帝国歌劇団の花形スタア・神崎すみれ一人で十分。ダブルキャストだなんて、ちゃんちゃらおかしいですわ!
「何だと、コラ! てめえ、ケンカ売ってんのか!」
「お〜ほほほほほ! カンナさん、おりるなら今のうちですわよ。このわたくしと毎日毎日くらべられるんですのよ。どっちが優れているかお客さんには一目瞭然ですわ」
「ケッ、一生言ってろ、バカ」
「おいおい、二人もやめてくれよ。そんなことでは今度の舞台はとても成功しないぞ。もっと仲良くしてくれないと……」
「ハッ、大きなお世話ですわ。とにかく、これからは稽古もカンナさんとは別にさせていただきます。下手な演技など見たくもありませんから」
「こっちこそ願いさげだよ! 行くぜ、隊長!」
「あっ、カンナ! 待ってくれよ! お〜い……」
「キャッ!?」
ドッシーーン!!
「あいてててて。由里くん、かすみくん、ケガはないか?」
「あ、大神さん。大神さんこそ大丈夫ですか?」
「ああ、なんともないよ。何を運んでるんだい?」
「今度の舞台で使う小道具です。そういえば大神さん、今度の舞台、主役ですってね。がんばってくださいね。今度のセットはお金かかってるんですよ!」
「そういえば、まだ脚本をもらってなかったな。由里くんはどんな話か知っているのかい?」
「ええ、ミステリー・アドベンチャー・ロマンって言うのかしら。人里離れた洋館で、夜な夜な起こる不思議な事件…それを調べに来た若い男女が遭遇する奇々怪々な出来事…ね、面白そうでしょ!」
「そうだね…もっとも、おれがうまく演れればのはなしだけど……」
「大神さんなら大丈夫ですよ! 体力もありそうだし」
「?」
「由里。これを早く運んでしまわないと……」
「あ、おれも手伝うよ。よいしょっ!」
「あ! 大神さんはいいんです!!」
「ん? 今、箱の中でなにか動いたようだったけど……」
「気のせいですよ。 大神さん、それよりカンナさんを追いかけないと!」
「あ! そうだ、忘れてた! じゃ、また後で!」
急いで去って行く大神。由里とかすみはそれを見送るとお互いに目と目を見交わし、ひそやかな笑いを浮かべた……。
(続く)

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