ハロウィン気味?大戦_神崎すみれ編 其の6(長文)



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投稿者: 神崎 操 @ pppa818.pppp.ap.so-net.or.jp on 97/11/30 02:42:44

In Reply to: ハロウィン気味?大戦_神崎すみれ編 其の5(長文)

posted by 神崎 操 @ pppa818.pppp.ap.so-net.or.jp on 97/11/30 02:41:14


「げっ!雨が降ってきやがった!!」

 雨はすぐに勢いを増していった。

「どうするんですの!このままじゃズブ濡れになりますわよ!」

「この奧に俺のじっちゃんが狩猟に来た時に、休憩する山小屋があるから
そこに行って雨宿りをしよう!」

 少年はそう言い、少女と共に山小屋の方へ駆け出した。

 走る二人の目に小さな山小屋が映った。だが、さらに雨の勢いは増していく。

「ほら!あの山小屋だ!!」

 少年は、走りながら後ろに付いてきている少女にそう言った。

「きゃあ!」

 少女は、慣れない山道のうえ雨で地面がぬかるんできた為に足を滑らして
転んでしまった。

「おい!大丈夫か?」

「う…く……………」

 少女は、すぐに大丈夫だと言い返そうとしたが、左足に走った激痛の為に声が
出なかった。

 取りあえず少年は、少女を助け起こすと少女を肩越しに支えながら山小屋
まで運んだ。少女が痛がるのでゆっくりとしか歩けなかった為、その間に二人は
かなり濡れてしまった。

 山小屋の中に入った少年は取りあえず中に有った少年のお爺さんの物と
思われる木で出来た頑丈な椅子に少女を座らせた。

「ふう〜ビショビショになっちまった」

 少年は、濡れた服を手で叩きながらそう言った。

「ごめんなさい……わたくしのせいですわ」

 少女は、少年にそう謝った。

 その時、突然少年の動きが止まった。

「どうしたんですの?」

 怪訝そうな顔をして少女は、少年に聞いた。

「なあにいいぃぃ!!俺の耳がおかしくなっちまったのか!?今、お前が
俺に素直に謝った様に聞こえたぞっ!?」

 それを聞いた少女の沈んでいた瞳がみるみる抗議の眼差しに変わって
いった。そして、少女は頬を膨らませて少年に食ってかかった。

「ちょっと!!それは、ど〜いう事ですの!!!!!」

「まあ、そんな事よりも早く服を乾かさんと…」

「せっかく、このわたくしが謝ってさしあげたのに…」

「まあまあ、そう怒るなって…」

 少年は、食ってかかる少女を巧みにかわしつつ、山小屋の奧の方に置いていた
薪を持ってきて、たき火を起こした。

 この時、少年がわざと挑発する様な事を言ったのは、責任を感じて気持ち
が沈んでいた少女がこれ以上落ち込まない様にする為であった。その事に少女が
気付いたのは、ずっと後になってからの事だった。

 しばらくの間二人はたき火にあたって服を乾かしながらいろんな話をして
過ごした。その間も雨は止むどころかさらにひどくなっていった。
 不意に少年は、少女が足を怪我した事を思い出した。それまでは、話に
夢中だった事と少女が足の痛みを顔に少しも出さなかった為少年は少女が
足を痛めた事を忘れていた。

「おい、足大丈夫か?」

 少年は、そう言って少女の足をしゃがみ込んで見てみた。

 少女の左の足首は、素人目にもかなり腫れ上がっていた。少年が少女の左足に
そっと触れると少女は、苦悶の表情を浮かべた。

「だ、大丈夫ですわ」

 そう少女は言ったが、どう見ても強がりでしかなかった。

「馬鹿!全然大丈夫じゃないじゃないか!痛いなら痛いって言えよ!!」

「だから大丈夫ですわよ、この位‥」

「下手な強がりはよせ!!」

 少年は、少女の目を見て強く言い放った。

 その少年の迫力に気圧されたのか少女は黙り込んでしまった。

 少年は、立ち上がると小屋の扉の方へと歩いて行った。

「どうしたの?」

 少女は、少年に不安そうな声で尋ねた。

「…村に戻って助けを呼んでくる…」

 少年はそう言って、小屋の扉を開けた。外はもの凄い風と雨だった。

「ちょっと!この嵐の中を行くつもり!?」

「……その足は一刻も早く医者に見せた方がいい」

 そう言って少年が外に飛び出そうとした時、少女は思わず叫んでいた。

「待って!…行かないで!!」

 思わず少年は立ち止まった。

「お願い…わたくしを置いて行かないで…」

 少女のその言葉に少年は背を向けたままこう言った。

「俺一人ではこの嵐の中をお前を連れて帰れない…」

 そして、少年は少女に力強い声で、

「待ってろ!………すぐに帰ってくる!!」

 そう言って少年は、山小屋をあとにした。

(早く…帰ってきて……)

 嵐の中に消えていった少年の後ろ姿を見つめて少女はそう願った。