ハロウィン大戦・かすみ編(長文)



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投稿者: VR @ 202.237.42.71 on 97/11/11 15:55:46


 ハロウィン大戦『それぞれの一夜、それぞれの想い』

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 「損な役回りだよなあ…。」

 俺はぼそっ、とつぶやいた。

 「まあ、そう言わずに。もうすぐ終りですから。」

 そう言ってかすみくんは、先ほどからせっせと伝票の束を
箱に詰めている。

 今日はハロウィンの夜。花組の特別公演も、そろそろ終わって
いることだろう。観客の声援が耳に飛び込んでくる中、俺と
かすみくんは事務室で伝票の整理に追われていた。

 はっきりいって、眠い。しぶいお茶でも飲んで目を覚まそう、
といっても、これで既に二十杯は飲んでるかもしれない。

 「ねえ、大神さん……。」

 「ん?何?」

 「二人っきりですね。」
 
 「ぶっ!!!」

 俺は口に含んだお茶を一気にふきだした。

 「……あの、どうかしたんですか?」

 「(げほげほ)い、いやあ何でも!」

 この人いつも真顔だから、冗談か本気か分からん。すっかり
動揺して目が覚めちゃったよ。そうだよな、かすみくんがそういう意味で
俺に声かける訳ないものな……。

 一時的にとはいえ頭の中を支配した感情を振りはらい、
俺は目の前にある伝票の整理に集中した。……?肩に、手が…?

 「大神さん……。」

 気付けば、かすみくんは俺の後ろに立っている。そして、両肩には、
あたたかい手が……。

 「えっ?あ、かか、かすみくん…?」


 「だいぶ、こってますねえ。」

 ……って、肩もむんかーい!! 俺の頭の中には、かすみくんに
激しい突っ込みをいれている自分の姿があった。

 「(落ち着け、大神!かすみさんが、そんな風にせまってくる
 訳ないだろう!)」

 自分に強く言い聞かせながらも、肩もみの快楽に浸る俺。かすみくんは
慣れたもので、…なんだか、…眠くなって…きた……。」

 と、その瞬間。

 「……大神さん……。」

 後ろから覆いかぶさるように、かすみくんが抱きついてきた。

 「!!!!」

 彼女の温もりが、背中にひしひしと伝わってくる。こ、これは
もしかして……!?

 「……ぐーー……。」

 「寝とるんかーい!!!!」

 今度ははっきり声に出して突っ込む俺。しかし、かすみくんは完全に
あっちの世界にトラベルしちゃっていた。

 「……もう……本気でドキドキしちゃったよ……。」

 よくよく考えたら、無理もない。俺が手伝いに来たのは午後からで、
かすみくんは朝から伝票を整理していたのだ。簡単には起きそうもない。

 「かすみくん……まあ、たまにはいいか……。」

 俺はかすみくんの温もりを感じながら、自分もかすみくんの方へと
もたれかかった。



 「キラーン。」


 「へ?何?今の、キラーンて?」

 「へっへっへ……見ちゃいましたよ、お二人さーん!」

 「げえっ!由里ちゃん!?」

 「ご報告、ご報告ー!!」

 由里はロビーの方へ駆け出した。ロビーには公演が終わり、お客さんに
お菓子を配っているみんながいる!

 とりあえずかすみくんをそこらへんに放り投げて(ひどいなあ)、
俺は由里ちゃんの後を追って事務室を出た。と、同時に、支配人室から
出てきた長官と目が合った。

 「おう、なんでい大神?そんなにあわてて。」

 「あ、いえ、その……。」

 「かすみのそばに居てやらなくていいのかい?へっへっへ。」

 「情報早えーーーー!!!!」

 これは早くしないと、大変なことに……いや、遅かったようだ。ゆっくり、
ゆっくりと、ロビーから足音が近付いてくる。
 俺はとっさに事務室に隠れ、扉の鍵をかける。皮肉にも軍で培われた俺の
聴覚は、近付いてくる人数を正確に捕えていた。……七人。花組のみんなと、
情報発信源の由里ちゃんだろう。

 男は外に出たら、七人の敵がいるという。

 しかしその言葉と、今俺が置かれている状況は関係ないような気がするぞ。


 『大神さ〜〜〜〜ん!?』

 みんなの声は、見事なハーモニーを奏でていた。さすが花組だ。

 って、だから違うだろ、大神!!

 みんなが扉を叩く音がしだいに強まる中、何も知らない
かすみくんは、のんきに寝言をつぶやいていた。

 「……んー……大神さん……もうすぐ終わりですよ……。」


 「…………俺の人生もね。(T_T)」



                       (終)