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投稿者:
敏 @ PPP16076.win.or.jp on 97/11/09 06:41:25
前書き
前略(爆)
いつの間にか木枯らし吹き荒れ、周囲も急に冬めいてきた今日、皆様いかがお過ごしでしょうか?
割と頻繁にこのBBSに顔を出しているつもりなのに、いまいちメジャーになりきれていない(^^; 敏です。
基本的にたいした文章書けない人なおいらとしては、ハロウィンというテーマがいまいち理解できていない上、
出遅れるうちにどんどん大会のレベルが上昇してしまって大変出づらい状況ではありますが、
「書いてみたい」発言を神○ 操さんに発見され書くはめになってしまいました(^^;
読みたくなかったら読まないで結構です、ていうより、あんまり読まんといて、恥ずかしいから(爆)
最近、おいらのHNを伏せ字にすると ”○” になってしまうことに気が付いた筆者・敏
#一文字のHNにこんな欠点があったとは……(泣)
******************ハロウィン大戦〜新たなる一歩******************
「で……これは、一体何の飾り付けなんですの?」
今日は休演日──パーティーの準備をするからと呼び出されたすみれの目の前には、飾り付けが進行中の楽屋がある。
その中の一つ……中身をくりぬき、顔を彫り込んだカボチャ──ジャック・オー・ランタンという名前だと、後日知った──と
にらめっこでもするような格好で、すみれは疑問を口にする。
「えーっ?すみれ、知らないの?ハロウィンだよ!」
「も、もちろん知っていますわ。……西洋のお祭りですわね。」
その部屋に居合わせれば誰にでも分かる程度の知識で、精一杯知ったかぶりをする。
「ふーん……じゃあ、何のお祭り?」
「そ、それは、えーっと……」
すみれは返答に詰まる。当然の事だが。
「万聖節の前夜祭だよ。みんなで仮装したりするんだ。」
見かねた大神が苦笑いを浮かべて助け船を出す。
……とはいえ、その大神とて昨日マリアに教えて貰ったばかりである。
「そ、そうですわ。そのぐらい、常識ですわ。」
「まあ、要は、どんちゃん騒ぎをするわけやろ?それやったらウチに任しとき!
きのう完成したばかりの、新・超えんかい五郎くん拾参型・改の出番や!」
前後の修飾語の多さが、爆発・修理・改造の履歴を表しているようで──実はその憶測は当たっていた──すごく嫌だったが、
誰もあえてそれを口に出さなかった。
「……そう言えば、マリアとカンナとさくらくんは?」
「マリアはんは厨房で料理、カンナはんは倉庫からテーブルを運んどるはずや……」
そこまで言って、紅蘭は首を傾げる。
「はて?そういえばさくらはんは?」
「そういえば、さっきから見かけないよ?」
「まったく……あの人は、どこで油売ってるんだか……。パーティーの準備も手伝わないで……。」
「あれぇ?でも、すみれも何もしてないよぉ?」
「……これからするんですわよ!黙ってらっしゃい!」
「まあまあ、二人とも、ケンカせんと……大神はん、もうぼちぼち準備も終わるさかい、さくらはん呼んできてんか?」
「ああ、わかったよ。」
__
銀座の夜景を眼下望む2階のテラス……
今夜、そこには物思いにふける乙女が一人……
(ここにいたのか、さくらくん……)
声を掛けようとして、ふと、何事か思いついた大神は、足音を消して背後からそーっと近づく。
そ〜……
「トリック オア トリート!」
「きゃあっ!?お、大神さん……びっくりした……」
「さくらくん、ここにいたのか。一体、何をしていたんだい?」
驚愕の表情を浮かべていたさくらは、少し呼吸を整えてから、やがてゆっくりと口を開く。
「大神さん……大神さんが初めて帝劇に来た日の夜、私がここで言った事……覚えてます?」
「『舞台ではあの街の灯のように光っていたい』……だっけ?」
さくらが顔を真っ赤に染めてうつむき、大神を軽く突き飛ばす。
「やだ、もう!そんなの、覚えてないで下さいよ!恥ずかしい……!」
乙女心というやつは、とにかく──少なくとも大神に理解できる程には──単純ではないらしい。
「なんだか、ここに来たら、急にそんなこと思い出しちゃって……
あれからいろいろあったけど、私は……今、光ってるのかなあって……」
ふっと……大神は笑みを浮かべ、さくらの肩に手を載せる。
「さくらくん……君は十分光っているよ。
舞台の上でも、普段でも。
見てごらん、さくらくん……」
促されるままに、さくらも外へと振り向く。
「この、綺麗な街は、君と、俺と、そして、花組のみんなで守ったんだ。
そして、人々は、花組の舞台を見て、君たちから元気をもらって帰る……
どちらも、君たちにしか出来ない……大切な仕事だ。これまでも、そして、これからも。」
「……」
「そう、君たちはいつだって輝いているさ……眩しいぐらいに……」
絢爛たる銀座の夜景は平和を願う人々の祈り。
煌めく満点の星は万聖節を祝う精霊のささやき。
そして、そんな風景があたかもこの二人のために誂えられた舞台背景なのではないかと思えるぐらい、
この一組の男女はホール一杯にロマンチックな雰囲気を振りまく。
──そこに観客がいないことがむしろ不自然に感じるほどに。
……さくらの視線の隅で、光の点が奔る。
「あっ、流れ星!」
(大神さんといつまでも一緒にいられますように……)
「何を祈ったんだい、さくらくん?」
「えへへ……秘密です。」
彼女ははにかんだ表情で答えをはぐらかす。
「大神さんは……何を祈ったんですか?」
「ああ……」
ちょっと照れたような笑顔を浮かべて、彼は続ける。
「帝都がいつまでもこのまま平和でありますように、ってね。」
そして、彼女がその言葉にほんの少しがっかりするような間も与えず、大神は続ける。
「それと、もちろん…………さくらくん……君のことも……」
「えっ……?」
やだあ、大神さんってば、冗談ばっかり……そう言おうとして、さくらは思いとどまった。
大神の真剣な眼差しが、それが冗談などではないことを物語っている……
(そ、そんな……本当に、大神さんがあたしのことを?)
そして……さくらの目は、いつしか大神の目に引き寄せられ……
聴覚は、高鳴りゆく己の心音のみを克明に捉え、
そして全身の神経は痛みを覚えるほどに研ぎすまされ、大神の次の言葉を待ち受ける。
ひそひそ……
「大神さん……」
そー……
「さくらくん……」
しーん……
『トリック オア トリートォッ!』
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
「まったく……遅いと思って見に来てみれば……」
「お兄ちゃんは、アイリスの恋人なの!」
「準備はとっくに終わってるんだぜ!早く来いよな!」
一気に詰め寄られ、大神とさくらはたちまち窓際に追い込まれる。
「まあまあ、そのぐらいにして、早くパーティーを始めましょう。
せっかく作ったボルシチが冷めちゃうわ。」
「そやそや。今夜はめでたい夜なんや。ケンカはあかんで。」
さっと身を翻して先頭を歩くマリアに、やや遅れて花組の面々はテラスを後にする。
最後に一人、残ったさくらは、少し名残惜しそうに窓の方を振り返ったが──
やがて、何か吹っ切れたように、力強く、前を見据えて──乙女は、また、歩き始める。
**************************************************
後書き
ふう〜……、疲れた。内容が結構恥ずいし(=^^=)
でもまあ、何とかそれなりにまとまったかな?
こんな駄文に最後までおつきあい頂き、まことに有り難うございました。
さて……○崎 操さん、まさか書かないなんて言いませんよねえ?(ニヤリ)
ではでは。
11月9日早朝 筆者・敏 敬白
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