第一幕



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投稿者: ditto @ ykha065.tky.3web.ne.jp on 98/3/08 00:46:49

In Reply to: サターンの金さん 第51回

posted by 金さん製作委員会 @ ykha065.tky.3web.ne.jp on 98/3/08 00:45:22

(第一幕)

この冬、もう何度目の雪なのだろうか?
外は霙混じりの雪、
しんしんと降り続くある晩のこと、

「またあんたかい?あんたもいい加減、現実に目を向けたほうが良いよ。」
義一は、行商らしき男に冷たく言い放った。義一はこの男を知っているようだが、正直もう関わりたくはないと思っていた。
「そこをなんとか。」
その行商らしき男は、か細い声で懇願した。
歳の頃なら四十半ばと思われるその男は、まだ十にも満たない男の子を連れている。冷たく言い放った義一だが、自分を見つめる子供の視線が気になるようだ。泣き叫ぶ訳ではないが、射すような視線が痛い。ついには義一が折れた。

「ん...仕方がないな。まあ、昔からの馴染みだから今回だけは買ってやるけど、次からはもう駄目だよ。」
「へ、へえ...」
「十年も前なら大した代物だったかも知れないが、いまならせいぜい三百文がいいところだな。」
「それで結構で。」
「ほらよ。」チャリーン。
「おありがとうございます。」
その親子は金を受け取ると、そそくさと雪の降る夜に消えていった。

「旦はん。今のは一体どなたはんでっか?」
「ああ...。」
「けったいな行商も居てはりますなあ。」
「腕はピカイチだ。だが...、可哀相に時代に取り残されてしまったようだな。惜しいことだが...。」
「へえ、それは気の毒でんなあ。」
「夜も更けてきた、そろそろ店を閉めるぞ。」
「へいでおま!」



−その日の深夜−

「お兄さん、お兄さん、お捜しの人物が見つかりましたでぇ。」
「...」
「見ておくんなはれな。この出来映えを。」
「なるほど。で、その男は今何処にいる?」
「ここから四半里ほど西へ行ったところにある古い寺に寝泊まりしているようでおます。」
「ふむ。」
「あの...言いだしにくいことでっけど、約束の金を頂けまっしゃろか。」
「そうか、礼をせねばなるまいな。もっと近くに寄れ。」
「へへへ、まいどありぃ。」
バギッ!


−古い寺−

「とうちゃん、寒いよう。」
「大二郎、すまんな。この俺にもう少し甲斐性があれば、おまえにこんな寒い思いをさせずに済んだものを。」
バタン!
突然、寺の戸が両開きになった。外から勢い良く、吹雪が舞い込む。その中に一人の男が仁王立ちしている。

「うわっぷ。な、なんだ!?」
「ええん(I_I)」
「迎えに来た。さあ、一緒に来るんだ。」
「だ、誰だあんた?」
「案ずることはない。お前の味方だ。」
「み、味方!?」
「おまえは、この世の中に恨みがあろう。その手助けをしてやるというのだ。」
「な、なんと!?」
「おまえを弾きだしたこの世の中に、復讐をするのだ。」
「...」