第一幕



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投稿者: ditto @ ykha124.tky.3web.ne.jp on 98/1/31 23:49:02

In Reply to: サターンの金さん 第45回

posted by 金さん製作委員会 @ ykha124.tky.3web.ne.jp on 98/1/31 23:44:30

(第一幕)
−越後上杉藩・江戸屋敷−

 ここに一人のお姫様がおりました。名は綾、則ち綾姫でございます。一人娘だったせいでございましょう、いろいろと甘やかされて育ったようで、大変我が儘なじゃじゃ馬娘でございました。
 父である藩主・一成は、娘の将来をいたく心配し、お淑やかにさせようとお茶やお花を習わせようとしましたが、綾は言うことを聞きません。自分は剣や長刀を振るっている方が好きだと突っぱねてしまいました。
 こうして自由奔放・勝手気ままに育った綾も、十八のお年頃になりました。性格や品行は、相変わらずのまあ少しなんですが、器量だけは流石に母親譲りの美形です。しかも、一人娘、越後上杉藩には他に跡取りがいません。当然、逆玉を狙った求婚者が続々と現れてきました。みんな家柄の良い立派な侍ばかりです。不運な事に長男でない為、跡継ぎに選ばれなかっただけの者達なのでした。
 綾の行く末を案じていた一成にとっては、願ってもないことでした。しかし...、どうにも気になるのは、綾の性格・態度です。先方である求婚者達は、そのことをあまり気にしていないようですが、育ての親としては悩みの種です。何とかまともに花嫁修業をさせてから、祝言を上げさせたいのです。それに今のままでは、綾が大人しく婿を取るとは到底思えません。
 そこで、一成は一計を案じました。綾と剣の試合をさせて、勝った者を婿にするのはどうか?気の強い綾ですが、自慢していた剣の腕で適わないとならば、相手のことを素直に認め婿にするのではないか。婿選別も出来て一石二鳥、これは名案だ。早速、一成は親族を集め、この婿取り方法について説明しました。
 この父親からの提案に、初めは驚いていた綾ですが、最後には「要するに、わらわが勝てば良いのじゃな?」と割り切ってしまいました。しめしめ上手くいったと一成は思いました。しかし、一成の思惑はものの見事に打ち崩されてしまいました。つまり...綾は想像以上に強かったのでした。婿候補も、それなりに剣の修業を積んだ者たちばかりでしたが、全くと言っていいほど綾の敵ではありませんでした。
 そんなかんやで一年が過ぎ、婿候補も殆どが打ち破られていました。
 (一体なんやねんこの展開は?^^)
...




上杉藩正室・千寿の方(以下)「殿...、綾のことでございますが、あの破天荒ぶりなんとかならんものでしょうか?こんなことならば、あの時あんなことをしなければ...。」
藩主・一成(以下)「もう昔の事だ。その話はよせ。綾が聞いていたら動揺するだろうに。」
「はっ。申しわけございません。つい...。」
「その話は、儂らが墓場まで抱いて持っていけば良いことだ。」
「しかし、綾の性格、一体誰に似たのでしょうか?」
「さてな。それにしても。此の月はついに求婚者無しか。なんとも労しい。」
「あの娘にとっては、その方が気楽でしょう。むしろこのままにしておいてはいかがでしょう。時が解決するやもしれません。」
「うむ...。」



綾姫「これ爺!もうへばったのか?かつては剣豪で名を成した爺も、寄る年波には勝てんと見えるな。」
剣術指南役・塚原莫山(以下)「なんのこれしき!まだまだ若い者に負けはせぬ。」
「 そうか。ならもう十番程、勝負といこうか?」
「(ぶるる)もう、勘弁して下され。姫は手加減というものを知りませぬからな。」
「やれやれ、これでは稽古にならん。」
「姫!これ以上強うなられて、如何いたすつもりでござる?もう世の男どもに適う者などおりませぬぞ。」
「全ては父上が悪いのじゃ。父上が、剣の試合で負けた者と祝言をあげさすと言い出すものじゃからして。好きでもない男と結ばれるのはまっぴら御免じゃ。」
「ですが、姫!このままでは婿の来てがおりませぬぞ!本当にそれでよろしいのですか?」
「まあ、好いた男ならば、わざと負けるのも良し...。」
「姫!どこぞに好いた男でもおられるのでございますかな!?」
「いや、例えばの話じゃ。」
「左様でございまするか(ほっ)。」
「それにしてもつまらんのう。もう、わらわの剣の相手を出来る者が居らぬとは。そろそろ剣にも飽きた。茶でも始めるとするか...。」
「ひ、姫様、い、今なんと!?」
「そろそろ、茶でも始めようかと言ったのじゃ。」
「おお!これは父上がお聞きになられたら、なんと喜ばれることか!かくいうこの爺めも嬉しゅうございます。ついに女らしい芸を身につける気になられたのでございますな。」
「まあ、たまには毛色の変わったことも悪くないなと思うたにすぎぬ。」
「そ...そんな程度のことでございますか...。」
「そうじゃ。...さてと爺。たまには外の空気を吸いたいのう。このところ屋敷に籠もりきりで退屈じゃぞ。ちと、お忍びで出かけてくるでな、父上や母上を適当に誤魔化しておいてくれ。」
「姫、お待ちなされ!ああ、行ってしまわれた...。ほんとに一度言い出したら聞かんのじゃからして。やれやれ、また殿のお叱り受けねばならぬか...。」
...
「これ塚原!綾はどこじゃ?」
「はっ!これは奥方様。今日も見目麗しゅうございますな。」
「お世辞など要らぬ。殿がお呼びなのじゃ、綾はどこかと聞いておる。」
「そ、それが...」
「屋敷の外に出たと!?全くあの娘は、いつも心配させるのだから。」
「まあ、姫でしたら心配には及びませぬぞ。」
「しかし何故か今日は胸騒ぎがする...何か取り返しの付かないことが起きねば良いが。」



「ああ、久しぶりのシャバ(?)の空気は旨いもんだな。」
 この時代、藩主の妻と子は、国元に帰ることは許されず、江戸の屋敷で暮らすことを義務づけられていました。箱入り娘は、たまの外出も道中はほとんど駕籠の中ですから、江戸にいても町の中のことはほとんど知らないのが実状です。この際、思う存分江戸の町とやらを見てやろうと綾は思いました。

 そんなんで何処をどう間違えたのか、綾は秋葉原に行き着いてしまいましたとさ。
 (うむ、またもや強引な展開(^^))

「やいやいやい!ふてえ野郎め!」
「何をするのですか!?」
バシッ!
ドサッ!
ズッガラガシャーン!

「な、何!?」
音がした方向を見ると、野次馬で黒山の人だかりが出来ていました。
「もしかしたらあれが江戸の華と言われる喧嘩かな?よし近くに見に行こう(^^)」