第一、二幕



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投稿者: ditto @ ykha086.tky.3web.ne.jp on 98/1/25 00:46:39

In Reply to: サターンの金さん 第44回

posted by 金さん製作委員会 @ ykha086.tky.3web.ne.jp on 98/1/25 00:45:04


−第35回のあらすじ−

占い師・大崎の父により自分のこれまで歩んできた道を否定された芸夢熱藩主宮道は、自分の正しさを証明するために具卵出亜を百万本売ると宣言した。そして...

(第一幕)

芸夢熱藩主・宮道(以下)「三十六万か...。しかも雑誌により大きく売上本数が違っている。」
芸夢熱藩江戸家老・高住(以下)「た、ただ...全国の販売店をくまなく集計しているわけではなく統計数値による推計でございますので、多少の誤差は含まれているものかと...。」
「それでも多く見積もっても四十万本がいいところだろう。」
「しかし、まだ発売後間もございません。これから徐々に売れて行き、最終的には五十万も射程に...。」
「もうよいわ!」
「ははっ!」
「...ちと外の風に当たってくる。」
「殿...」

 ここ7日あまりで大雪が降ったせいか、正月も既に半月ほど過ぎ商売で忙しなかった通りも、今はほとんど人通りはない。ときおり通る子供の口から耳に入る話題は、サターンの話ではなく、他機種の事ばかりであった。
 売上本数は、既に八十万から九十万に届いているという。具卵出亜がそれら他機種の作品に劣る筈は絶対にない筈。宮道にはそういう自負があった。しかし、このような自負が強いほどプラットホームの選択を間違えたのではないかという疑念も強くなっていった。

「やはり、私が間違っていたのか...。」

「宮道殿ではござらぬか。」
肩を落としながら歩く彼に声をかけたのは、中町藩江戸詰め家老・安辺(やすべ)であった。
「おお安辺殿。昨年は、世話になり申した。」
そういえば例の占い師・大崎の父を紹介したのはこの安辺だった。
安辺(以下)「いかがなされましたかな?正月早々浮かぬ顔をされておられますが。」
「いや、少し考え事をしていたのでござる。」
「ここで立ち話もなんでござる。そこの居酒屋で話しでもどうでござるかな。もしや拙者めが力になれるかもしれぬでござる。」
「い、いや。さして深刻な話でもござらぬ。そう気をつかわずとも...。」
「まあまあ、たまには息抜きをせねば。」
「そ、そうでござるか。なら。」

ゲーマーの金治(以下ゲ)「あれは確か...。」
偶然通りかかった金治は、宮道と安辺が連れだって居酒屋に入るのを目撃した。日頃はあまり接点のない二人、珍しい取り合わせだなと思い、ふと足を止めたのだった。
素浪人・花山末吉(以下)「どうしたい遠山のう、知り合いか?」
「ああ。知り合いという程ではないが。」
「ならこんなとこで道草喰ってねえで、早く行くぞい。」
「...そうだな。」
山に促されその場は離れたものの、金治の頭には先程の二人のことが妙に引っかかっていたのだった。



「そうでござったか。あの具卵出亜が目標の半分もいかぬとは...。」
「あいや、これはお恥ずかしい。元々私の立てた目標が無謀過ぎただけのこと。仮に三十六万本でとまったとしても我が藩としては過去最高記録でござる。これは本来ならば祝うべき事であるかもしれぬて。」
「それはよいことでござる。売上というものは、多かれ少なかれ運に左右されるもの。たまたま巡り合わせが悪かっただけかも知れぬでござる。しかし...それにしても少な過ぎるような気がいたす。あれほどの作品が、手前どもの作品の半分にも満たぬとは。いや、これは失礼。実は、貴公の具卵出亜を拙者もやってみたのでござるが、このような作品を出されてはかなわぬと思っておった次第でござる。」
「そ、そなたもそうお思いか!?」
一時は自分の無謀な目標を責めた宮道であったが、安辺のこの一言でまた疑念が再び強くなっていった。作品としては問題ないということはこの安辺をはじめ多くの人が認めるところである。とすれば失敗の原因は何か?

「安辺殿!お願いがござる。」
「はっ。拙者でできることならなんなりと。」
「大崎の父にもう一度占ってもらいたいのであるが。」
「...お易い御用でござる!」

(第二幕)

安辺に連れられて宮道は、再び大崎までやってきた。先日来たときは客で長蛇の列であったが、今日は客の姿は無くひっそりとしている。

「今日は他に客の姿が見えぬようだが。」
「表向きは今日は休みということになっているようでござる。しかし本当に休みでという訳ではなく、お偉い方のために空けてある日と理解されよ。」
「そうでござったか。...しかし、先日は」
「前回は急な御用でございましたから、平日に時間を割いて頂いたのでござる。」
「それは忝のうござった。」

しばらくすると大崎の父が、例の如く水晶玉を持って現れた。大体、占い師という者は多少なりと浮き世離れした風貌をしているものだが、なるほどこの大崎の父も同じような風貌をしている。もみあげから顎や口のまわりまで白い髭をぼうぼうに生やしている。

「大崎の父でござるな。先日は失礼いたした。実は...」
大崎の父・(以下)「口を開かずとも、そなたの言いたいことは判る。」
事の有様を説明しようとする宮道を制するように大崎の父は、あっさりと言ってのけた。
「己の進んできた道に迷いが生じたのであるな。そしてこれからはどのように歩んでいくべきかが知りたいのであろう。」

図星であった。宮道は、あまりにピタリと言い当てられたため、自分が言いたいことを途中で遮られた不満など消し飛んでしまった。
「そ、その通りでござる。」
「やはりな。」
「どうしてそのようなことが判るのですかな?」
「既にお前の心の内はこの水晶玉に映し出されておる!」
「水晶玉に!?  な、なにも見えませぬが...。」
「木を見て森を見ず!
  水晶玉を水晶の玉と見るような輩には到底見えて来ぬ世界じゃ。」
「さ、左様でござるか...。」
「さて本題に移るとするか。水晶玉よ!この迷える男の進むべき道を教えたまえ!」

崎の父は、何やら水晶の玉をなでるように回しはじめた。一体何事が起きるのかと息をひそめる宮道。そして...
「そなたの進むべき道見えたぞ!!」
「し、してなんと!?」
...


「いつ江戸に戻ってきたんだい?」
「つい7日程前だ。なに、そろそろ用心棒家業にも飽きてきてな、また道場を開こうかと思うのだ。」
「そうかい。」
「なあ遠山...。」
「末吉よう...すまねえがその呼び方は二人の時だけにしてくんねえかい。事情があってな、金治と呼んでくれ。」
「おおっとそうだったな。」
「しかしあれからもう5年になるのか...。」
「我が妻と子を殺した憎き賊を捜すため、そして自分の心の痛手を癒やすために全国を旅してきた...。」
「音羽の番蔵か...。人相書きをばらまいたり賞金をかけたり、奉行所でも八方手を尽くしながら探しているのだが...、すまん力及ばず...。」

(作者注:かつて剣の道場を開いていた花山は、自分が留守をしている間に音羽の番蔵と名乗る賊に押し入られ、妻と子を殺害されてしまったのである。)

「番蔵は憎い、見つけたら必ずこの手で仇を討ってやる。 しかし、そんなことにとらわれすぎて、いつの間にか只あてもなく放浪する情けない自分に気付いたのだ。そしたら、天国にいる妻や子が、儂の行く末を案じているように思えてなあ。」
「それでまた道場を開く気になったのかい。」
「ああ、そうだ。これ以上、天国の妻や子に心配はかけられぬからな。」
「花山の旦那ぁ!」

「おおっと、またうるさい奴に出会っちまったい...(^_^;」
沼津の半次(以下)「またこんなところで雪花菜喰ってやがってもう。」
「儂が何を喰おうと勝手だろうが!」
「末吉...こ、こいつは?」
「儂の旅仲間でな、沼津の半次って野郎よ。」
「おお、旦那のお知り合いですかい?」
 おひけえなすって!」
「お、おひけえなすってぇ!?(¨;)」
「てまえ生国とはっしますところ遠州でい。遠州遠州とっても広うござんす...」
「おい沼津のう。くだらねえ挨拶しても誰も聞いてねえぜ。」
「なんだと?折角、人が気持ちよく啖呵切っているてぇ時によ、水を差すようなことこきゃがって。やい、この雪花菜野郎!」
「お、雪花菜野郎だとぉ、このクソ馬鹿たれめが!」
「(う−ん、こんな人たちをレギュラーに加えて良いんだろうか ^_^;;;;)」