狂える者の剣 第八話の3『超人達の戦い』



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投稿者: 柏木耕一(旧・日光) @ p19-dn01kuki.saitama.ocn.ne.jp on 97/9/14 18:46:12

 何か鈍い音が響いた。次の瞬間、レオンの体が吹き飛び、壁に叩きつけられる。壁に方針円状の亀裂が走り、さらにレオンはその壁を突き抜け、瓦礫の山に埋もれた。
 ルリは何が起こったのか、全く理解できなかった。とりあえず回復能力を全開にして、傷を塞いでいく。ショック死の可能性、斬り殺される可能性がなくなったといえど、出血多量による死亡の可能性は依然付きまとっている。傷を塞がなければ、血は流れ出続けるのだ−−体力と共に。
 通路の奥から、一人の少年が、ゆっくり、ゆっくりと歩いてくる。赤毛をうなじのあたりでまとめ、人懐っこい笑顔を浮かべた少年。
 その姿にもまた、ルリは見覚えがあった。
 それは−−。
「神楽さん!」
 “千里眼”納真神楽は、一丁のライフル銃を右手に持ち、ルリに微笑みかけた。
「レオンのヴァンプ・フィールドも、僕の能力は中和できませんからね。あなたを見ていて正解でしたよ。まさか彼が遺産管理者だったとは……」
 神楽は、体力を失って、立つこともままならないルリに肩を貸すと、眉をひそめてそう呟いた。過去共に戦った仲間が、全ての元凶たる“魔王”の遺産を管理していたというのだ。もっとも、真の意味での元凶は武藤美樹という一人の女性なのだが。
「昔の仲間を手に掛けるのは、心辛いですね……」
「殺すことが辛いのであれば、その辛さは必要ない」
「……!?」
 二人が振り向く。堆く積もった瓦礫の中から、右肩口の先から全てを失ったレオンが、その姿を現した。
「そんな、馬鹿な……!」
 先刻神楽が撃ったのは、ウェザビーマークVという、世界最強の威力を持ったライフル銃であった。その瞬間打撃力は、実に3tの物質を2m移動させる。人間にかすりでもすれば、その衝撃だけで心臓を止めてしまうと言われるほど凶悪な威力を誇る銃だ。
 その直撃を受けていながら、レオンは平然と立ち上がってきた。
まさしく化け物としか言い様がない。
「“千里眼”納真神楽……貴様もまた遺産管理を望むのか? “魔王”の再起動を望むのだな?」
「いいえ、ヴァンプ、それは違いますよ」
 神楽はルリをそっと壁にもたれかけさせると、左手にフリーダムアームズ・454カスールを握った。熱線兵器を抜かせば、市販品では最強の454マグナムを使用する銃で、最終目的が熊狩りだったということからもその威力が窺える。
 ウェザビーマークVにカスール。二丁拳銃で撃てば、間違いなく反動で両腕がへし折れる装備である。
「そんな装備でいいのか? 私が死ぬ前に、貴様が戦闘不能になるぞ」
「これでいいんですよ」
 神楽は銃を構えた。ライフルは当然ながら、カスールもシングルアクション故に連射は不可能だ。レオンの攻撃スピードから考えて、実際神楽が撃てるのは両方の銃から一発ずつ、だろう。
「さあ、来なさい、ヴァンプ。僕の友人を傷つけた罪は、贖ってもらいますよ」
「……吠えるな、神楽」
 右腕を無くし左腕だけに刀を持ったレオンは、ぎしりと歯を鳴らした。
 そして−−。

 続く