第三幕



[ このメッセージへの返事 ] [ 返事を書く ] [ home.html ]



投稿者: 遠山金三郎 @ tproxy.tky.threewebnet.or.jp on 97/8/01 23:17:36

In Reply to: 第二幕

posted by 遠山金三郎 @ tproxy.tky.threewebnet.or.jp on 97/8/01 23:14:59

(第三幕)

その日夕暮れ七王子村
庄屋・吉兵衛(以下)「これは橋本様。遠いところをよう参られた。」
「わが奉行所は投書を真摯に受けとめる。詳しい話を聞きたい。」
...
「では昔から低尾山に住む鬼の言い伝えはあったのだな。」
「左様でございます。しかし私どもは、鬼の存在など信じてはおりませんでした。ところが一年ほど前から、鬼を見たという村人が増え、田や畑が荒らされるようになり申した。」
「一年ほど前からか、...何か変わったことは思い当たらぬのか?」
「いや、そのようなことは...、おお!そういえば、ちょうどその頃、山に猟に出かけた村の者が白い鹿を仕留めてきましてな。白い鹿は珍しい、高く売れるといって剥製にしたのですが、売る前にその者が不慮の事故に合いましてな命を落としてしまったのです。村の衆は、白い鹿を仕留めたことによって山の神様が怒りなすったと畏れ、その鹿を手厚く葬ったのでございます。が、まさか鬼とは関係ありますまい。」
「うーむ、関係があるかどうかはわからぬが、一応気には留めておこう。ところで、代官の屋敷はこの近くなのか?是非お会いしたいのだが。」
「お代官様に。ならばすぐそこです。私もお供いたしましょう。」
―――――――――――――――――――――――――――――
代官・江川辰馬の屋敷にて
「この度の事件、誠に遺憾でござる。」
江川辰馬(以下)「まさかこのような事態になるとは思いませなんだ。」
「それにしても賞金に百両もの大金を懸けるとは、感服つかまった。」
「なに、私財をなげうつことなど、代官として当然のつとめ...。」
村人A「御代官様!御代官様!!」
「何事じゃ、騒々しい!今、町奉行所からの客人を迎えておるところじゃ。」
村人B「い、今し方、与作どんが鬼に襲われました!!!」
「なんじゃと!?で、与作は無事か?」
村人A「命には別状はないようですが、大怪我を負っております。村には大した医者もおりませぬので、失礼とは存じながらもここに連れてきました。どうかお許しを。」
「何をしておるか、人の命はこの星よりも永いのだ。断りは後でもよい、早うこの屋敷の薬をありったけ使ってでも、手当をせんか!」
村人B「はっ、おありがとうごぜえますだ。」
与作「お、おら見ただ...。嘘じゃねえだ。あ、あれは本者の鬼じゃ。」
「これ、口をきくでない。今は安静にすることじゃ。」
「いよいよ何もしない人を襲うようになってしまったか...。」
「その与作が鬼にあったと言う場所がわかりますか?」
「まさか行くつもりでは。」
「御奉行に出来るだけ詳しく報告をせねばならぬのでな。」