ネタバレ感想文「スターシップ・トゥルーパーズ」



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投稿者: 黒い板 @ 133.97.169.* on 98/6/17 03:22:27

いいですね。この作品。
ストーリー(ドラマ)的には別に大したこと無いんだけどね。

前作「ショー・ガール」はダンス(歌無しミュージカル?)映画で、ダンス(ショー)の
シーンなんて普通に作ればあくまでも主人公の成功と成長の物語の添え物か同程度に描く
のだけれど、バーホーベンはダンス・シーンに重点を置いて、美しさより躍動する肉体を
激しく描きまくった。そして非ダンス・シーンまでがダンス・シーンのテンションが続い
ているかのような圧倒的な“パワー”で全編を描ききっていた。その結果、人間に深みな
んて全くないけど、人間の欲望のエネルギーというものがバンバン伝わってくる、とんで
もない作品であった。(注:ほめているつもりです。)

さて、本作「スターシップ・トゥルーパーズ」でもやっぱりドラマが単純である。といっ
ても、「ショー・ガール」の時とは単純の意味が違う。見た目は主人公の戦士としての成
長+恋愛群像劇なのだが、この軍国主義の世界において、主人公は軍隊になんて入隊しな
いで大学に進学することを望む“一般人”の両親を持ち、カノジョを落とすことばかりを
考えている健全(?)な若者。それが入隊することで成長し、両親の仇討ちのために戦う
のではなく、国家のために戦う真の“市民”へと成長していく物語なのである!
また、戦力として復帰出来ない者は切り捨てるという、優れた部隊長への成長も見逃せな
い!!これらを単純に堂々と描ききってしまうところが、素晴らしい。

ラストがまた良い。クライマックスで主人公が逃げているうちに虫の指揮官が捕まって戦
闘が終わってしまって、同級生三人で『俺たちが揃えば最強だなぁ』(みたいなこと)な
んてノンキに言っているうちに物語は終わり。
しかし、この三人を軍のエースとして紹介するインターネットTV風(?)のプロパガン
ダ映像にスムースに切り替わることで、あたかも我々観客が今まで見てきたのが軍の宣伝
映画であるかのように思わされる。このバーホーベンの悪意に満ちた演出がたまらなく気
持ちいい。

前作ではダンス映画でダンスの美しさより、躍動する肉体の美しさを描いていた。戦争映
画でもある本作では、戦争の悲惨さではなく、無惨な死のみを強調して描いている。この
戦闘(訓練)での死にっぷりの激しいことといったら。それを演出によって見せるのでは
なく、その殆どをそのままズバリ見せるという方法論のおかげで、虫と戦うバカバカしさ
に加え、そんな戦闘で命を失うバカバカしさが一層引き立っている。

しかし、ハイテク兵器無しに人海戦術で戦う人間様ってのは虫とさほど変わんないねぇ。
ラストの虫の指揮官を引きずっているのなんか、エサを運ぶアリンコだよな。


その虫の動きもすごいけど宇宙艦隊もすごい!戦艦の撃沈シーンには驚いた!!その原因
となる虫の攻撃はアホ臭いけど・・・。僕としては、これらの映像はかなり衝撃的な映像であった。(でも、ビデオだとちゃちく見えるんだよなぁ、きっと。)

あとこの作品、細かいディテールが面白い。TVの協力的な子供とか、“娯楽”を与えら
れて大喜びする兵士たちとか。特に、究極の男女平等社会はスゴイよなぁ。フェミニスト
たちは一体どう思うのだろうか?ぜひ、知りたい。


「ショー・ガール」は偶然生まれた怪作かと思っていたけど、どうもバーホーベン監督は
本物のようだ。「氷の微笑」は全く興味が無く見てなかったけど、見なきゃいかんね。
次回作も“ハード”な作品を期待!!