ネタバレ感想文「リング/らせん」(無駄に長い文です



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投稿者: 黒い板(原作は読んでませんし読む気もない) @ 133.97.169.162 on 98/4/06 05:35:40

正直に言います。「らせん」はさておいて、「リング」には本当にビックリさせら
れました。こんな“正しい恐怖映画”が観られるなんて。しかも日本映画で。

ストーリー以外のすべてで恐怖を堪能させていただきました。こんなに見事に怖が
らされる映画は久しぶりです。(小学生の頃以来かな。もっとも、そのころは今よ
り単純バカだっただけなんだけど。今は複雑バカ。)

僕がもっとも“恐怖”を感じたのはビデオの中の映像の和室の部分。この部分怖すぎ!!

逆に残念なのはラストにおける、主人公のアノ決断の場面からは“恐怖”と“哀し
み”が伝わらないという点。“哀しみ”は無くても良いかもしれないが、“恐怖”
は欠かせない。ここで“恐怖”が伝われば作品がぐっと引き締まると思う。

本編のままだと観客のテンションは、真田広之の部屋での“出来事”を頂点として
エンドロールまで下がりっぱなしで、このシーン以後が蛇足的印象として終わって
しまっている。


しかしもっと根本的な部分として、やっぱりサイキッカーはどうかと思う。“呪
い”というものだけなら一つの作品の中で 『こういうものが存在する世界です』
と、なっていてもすんなり作品世界に入り込める。

だけど、こういうものが二つも作品世界の大前提とされていると、いくらすばらし
い演出でもどこか引いてしまう。その上真田広之の能力と貞子のは異質みたいで、
ますます作品世界を拡散させてしまっている。

しかし“呪い”のくせに回りくどすぎるよなぁ。なぜ、ビデオテープなんだ?な
ぜ、電話がかかってくるんだ?その必然性が全く見えない。真田“サイキッカー”
広之に電話が掛かってこなかった理由が作品の鍵かと思えば全く意味ないし。

だからクライマックスで“アソコからアレが現れたシーン”で思いっきりビビった
0.1秒後には上の問題が宙ぶらりんのおかげで物足りなさが恐怖を減速させていっ
た。

人間嫌いで、恐怖を体験させたいなら井戸の中から念じてインチキ博士とかを殺す
なり、米ソ間戦争を引き起こすなりしたほうがサイキッカーという感じがするぞ。
“超能力”なんかより単純に“怨念”の方が僕は怖いです。日本の風土にもシック
リくるし。

だからこそ、この非日常的・非科学的な“呪い”“超能力”という要素と日常的・
科学的な“ビデオテープ”“電話”というそれぞれの要素がきれいに結びつけば、
それこそ演出だけでなくストーリー的にも、とてつもない恐怖が生まれたかと思う
と、残念でならない。


で、「らせん」がその役目をしているのかと思えば、新しい要素で上記の要素の隙
間を埋めるのではなく、新しい要素で話を広げるだけでまとまりがなく、共有して
いるはずの作品世界が見事に空中分解をしてしまっている。
もし、これが外伝的な位置づけであるならばこれもよい。しかし続編ともつかない
中途半端になってしまっている。


観客は奈々子嬢や真田広之への情を引きずったまま、佐藤浩一からの視点で見せら
れる。佐藤浩一に感情移入をしにくいのは当然である。
しかも「らせん」の冒頭で真田広之の姿を見せてしまうのは致命的である。

佐藤浩一扮する主人公の“苦しみ”を十分示し、感情移入をさせておいてから“死
ぬことのできるビデオ”と遭遇させるという構成の方がよかったのでは?

その一方で「リング」との繋がりがいい加減でもったいないことをしている部分も
ある。中谷美紀に母性的魅力が欠けているので、怯えた佐藤浩一を受け入れるシー
ンにも説得力がなかった。中谷美紀は「リング」でそのようなキャラクターが出て
いればかなり変わっていたはずである。

また「リング」の都市伝説化しているというエンディングにつながるように、「ら
せん」の冒頭でビデオテープの噂話をしているオンナノコたちの声だけでスタート
すれば、それだけで観客は“ブルッ”とくるはずである。


上記のも含めて全体的にどうも唐突すぎる。真田広之がすべて見越して佐藤浩一巻
き込んでいたというのも、それらを納得させる描写がちょっと足りない。“DNA
PRESENT”の件も謎解きのための謎という感じだし、“暗号”というのを突然持ち
出し同時進行的に回想を見せるのは脚本としては最低である。

すべてが貞子の戦略であるなら、なぜ真田広之を殺す必要があったのか。佐藤浩一
を利用しなくても真田広之で足りるはずだし。

ええっと、“情報”がウィルスを生みだし、宿主を殺すんだったよね。で、佐藤浩
一が中谷美紀とSEXすることで{中谷+ウィルスin佐藤}/2=“貞子2nd”がで
きる。
“貞子2nd”が貞子の“意志”を持ってるわけだから、“情報”=ウィルス=貞
子ってコトでいいのか?でも、我々一般人の“生物観”を超越している“存在”と
いうことね?(成長の早さとかも)

ということは人類を生かすもコロスも貞子次第!と、するつもりだったんだろう
か?それとも人類がすべて貞子のコピーに入れ替わる!と、したかったのか?
どっちにしてもこのあたりがストレートに伝わらないのは痛い。
また、生き返らせた息子=貞子3rd( 4th?)をオリジナルの息子のように扱ってい
るラストの恐怖もあまり伝わらない。“画”も存在する必然性がないから驚けな
い。
これらの重要な部分を駆け足で見せるため、“予見される未来の恐怖”を感じるこ
となく、ただの馬鹿話に終始している。いったい映画として何をみせたいのか全く
分からない。

まぁ、“あらゆる媒体における【情報】”というものと“超能力=念”というもの
の繋がりに焦点をあてて、“貞子の目的”という謎を追い求める物語にしていれば
それなりのSFスリラーになったんじゃないかなぁと思う。

そうそう、文章読んでウィルスが発生するっていうのもテキトーすぎる。強引な理
屈でもいいから、もう少し説明を描かないとしらける一方だ。

それに“人の目に触れる”が目的なら選ぶ媒体はテレビや新聞の方が効果ありそう
だ。インターネット上を流れるというのも良さそうだが、映画というメディアは選
んでもらえないだろうなぁ。しかし、そんな回りクドいことするなら念て・・・っ
て、身も蓋もないなぁ。

一応面白いネタがごろごろしているけれども、本当に原作や「ループ」ではきっちり描かれてるんか?『原作を読めば解る』というのは気に入らないから僕はあくまでも映画だけで評価する!「ループ」も読まない!   映画化されれば観るが。

とにかく問題は貞子の回りくどさ!!! こいつが一番のマイナス点であり、一番
の謎。「リング」は撮影、編集、音入れが絶妙で、それらの効果による恐怖は、十
分に与えてくれているだけにもったいない!!
「らせん」も大まかなスジは面白いだけにもったいない。