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投稿者:
Rudolf @ 202.250.122.225 on 98/2/27 12:09:07
時が移り行くのは早いものである。ついこの間、正月の初詣に行ったかと思えば季節は冬本番、弐月如月、雪の季節。帝都もついに氷点下を記録し、観測史上稀に見る大雪に見舞われていた。当然のことながら、帝劇の周辺もぼっかりと積雪50センチを記録していた。尚、断っておくが、この雪と降魔との間にはなんの関連もないことをご承知おきいただきたい。
「わーい、雪だ雪だ。」
「アイリス、そんなにはしゃいでいると転ぶわよ。」
「大丈夫だもん、マリア。アイリス子供じゃないもん。あ、」
当然子供云々で転倒の有無は変わらない。でも度をすぎれば当然誰しも。
「えーん、痛いよ。マリアぁ、カンナぁ。」
「だから言わんこっちゃねえ、ほらよ。」
転けたアイリスに駆け寄るマリアとカンナが助け起こす。
「しかしこれではお客様の出足に影響するわね。」
「というよりよ、蒸気鉄道も雪で動きやしねえ、来ること自体無理だろうよ。」
「公演は暫く中止ね。後であやめさんに相談しておくわ。」
舞台は変わって帝劇のバルコニー、物思いに耽るさくらが一人たたずむ。廊下を歩いていた大神がそれに気付いて声をかける。
「どうかしたのかい?さくらくん。」
「あ、大神さん。いえ、何だか思い出して。」
「思い出す、って、何をだい?」
「仙台です。あたしの田舎は冬になると雪が降り積もって春まで溶けないんです。だけど帝都に来てまでこんな大雪に遭うなんて思いもよらなかったんでつい。」
「そうか、実は俺も少し田舎を思い出してさ。」
「大神さんの田舎も雪が積もるんですか?」
「ああ、だけど向こうにはこんな立派な建物は全然ないからね、かえって新鮮な感じがするよ、帝都に積もる雪には。」
「そうですね。仙台にも帝都ほど大きい建物はありませんから。」
「でも、そのせいで帝都の交通はマヒ状態。みんな家の中から出られないみたいだよ。だから、今の公演も暫く中止しようってさっきマリアが言ってたけど。」
「そうなんですか、ちょっとがっかりです。」
「今は弐月公演”マイフェアレディ”だったね。さくらくんとマリアが主役の。」
「はい、でもお客さんが来られないんじゃ仕方ありませんね。」
出所は心か身体か、さくらの肩が震えている。
「ここは寒いから中に入ろう。後で今後の公演の打ち合わせをしようってマリアも言ってるから。」
「はい………、」
その後の言葉をさくらは続けなかった。いや、続けられなかったのか。いずれにせよ打ち合わせに出ないわけにもいかない、二人は奥に入っていった。
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