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さわだです @ pc023013.ppp.waseda.ac.jp on 97/12/25 00:02:26
In Reply to: 師走大戦〜椿姫の朝(長文)
posted by さわだです @ pc023013.ppp.waseda.ac.jp on 97/12/25 00:00:56
−午後七時−
すでに午後の部の公演も終わり、椿は売店の片づけをしている。
「じゃあ椿ちゃん、俺は先にあがらせてもらうよ。」
「お疲れ様でした、大神さん。」
「椿ちゃんもお疲れ様。もう少し頑張ってね。」
そう言うと大神はロビー横の階段を上っていった。
「あたしももうひと頑張りね!」
自分に激を飛ばして、椿は再び仕事に取り掛かった。
それから十分ほどたっただろうか、
「ふう〜、これでよしっと!」
すべての商品を整理し終わって、椿は満足気に売り場のなかを眺める。
・・・といっても、それは手落ちがないかのチェックも兼ねているのだが。
「うん、全部OK!」
「椿ちゃん。」
「はい?あ、さくらさん。・・・あれ、その桜・・・。」
声を掛けられて振り返ると、さくらがにこにこと立っていた。その手には一枝の桜が。
「それに、ど、どうしたんですか、みんなそろって・・・?」
さくらだけではなかった。
さくらの後ろには、花組メンバー、事務室のかすみと由里、大神、米田が勢揃いしていた。
手に持っているのは、菫、アイリス、橘、蘭、かんな、ユリ、かすみ草、・・・・それぞれ自分と同じ名の花、
そして大神はツバキ、米田はあやめの花を・・・。
「誕生日おめでとう!」
全員の声がそろう。
「これはあたしたちからのプレゼントよ!」
そう言って、まずさくらが自分の桜を差し出した。
「あ・・・ありがとうございます・・・!でも、こんな時季にどうして花が・・・、あ!?これ・・・!」
さくらから受け取った桜の枝は、本物そっくりの紙細工だった。
「アタイたちの手作りなんだぜ。」
「ホンマはな、ウチが発明した促成栽培マシーン『おんしつくんクリスマススペシャル』で
本物の花を作ろうかと思ったんやけど・・・、ほら、桜や椿は木やろ?
大きさ的にも時間的にも無理やさかいなあ。」
「そしたら、みんなで紙細工を作るアイデアを支配人が出してくれたのよ。ね、支配人!」
由里に話を振られた米田が答える。
「うむ、かたちに残る方が良いとも思ったんでな。」
(かたちに残る・・・か。)
その言葉に、大神は米田の手の中のあやめの花をそっと見つめた。
全員の心にあの人の姿が浮かぶ。
・・・・・・・・・
「あやめお姉ちゃんもいっしょにおいわいしてくれてるみたいな気がするね!」
アイリスの無邪気な言葉とその笑顔に、その場にいた全員の顔がぱっと明るくなる。
「ああ、そうだねアイリス!」
大神は、アイリスの頭をぽんぽんとたたくと椿の方に向き直った。
「椿ちゃん、朝も言ったけど誕生日おめでとう!
はい、これ。自分ではなかなかうまく出来たと思うんだけど。」
「椿ぃ〜、おたんじょうびおめでとお!アイリス、一生懸命つくったんだよ!」
「おめでとよ、椿!アタイは不器用だから、ちょっと大きくなりすぎちまったけど・・・。」
みんなくちぐちにコメントを付けながら、椿に特製のプレゼントを渡していく。
「みなさんほんとうに・・ほんとうに、ありがとうございます。」
一人一人から花を受け取りながら、椿は笑い泣きの表情である。
「おっほほほほ。椿さん、それじゃあ泣いているのか笑っているのかわかりませんわ。」
「そやそや!ハッキリした方がええで、椿はん。」
「えへへへへ、そうですね。じゃあ笑うことにします!」
涙をぬぐってにっこりと微笑む椿。
見ている方も微笑んでしまうほどの、幸せいっぱいの笑顔だ。
「ふふふ、椿らしいわね。」
「やっぱり椿には笑顔が一番似合いますもの。」
それを見てマリアもかすみも楽しそうに笑っている。
「さあ、それじゃあサロンで大宴会だ〜!!」
「おー!!」
米田の掛け声に、みんな大きく答えて歩き出す。
「じゃ、いこうか、椿ちゃん。」
「はい!」
大神が声を掛け、みんなからもらった花を幸せそうに見つめていた椿も歩き出した。
(うふふふ、今日は最高の誕生日だわ)
「でも昨日はクリスマスイブだったから、今日で二日連続ケーキですね!」
「え?・・・うん、フフフ、そうだね・・・・・。」
−外は雪が静かに降り始めていた−
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