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HRK @ prxA1.kyoto-inet.or.jp on 97/11/19 16:21:49
In Reply to: 紅蘭の秋の交通安全!(爆)
posted by HRK @ prxA1.kyoto-inet.or.jp on 97/11/19 16:16:15
しかし、
紅蘭はそんな俺の予想に反して、まるで神業の様に蒸気バイクを操り、
曲がり角をグングンまがってゆく。
そのまま倒れるのではと思うくらい蒸気バイクは傾き、車体はきしみ、
後輪は滑り出し、今にも道から飛び出しそうだ。
その曲がり角をまがっていく数秒の時が俺には永遠に感じられた。
紅蘭はそんな状況でも落ち着いているように見えた。
巧みに蒸気バイクを操り体勢を立て直し曲がり角をまがりきると、
しばらく惰性で進んでから蒸気バイクを道の脇に止めた。
「いっや〜、危なかったで〜!まがりきれるとは思わへんかったわ〜。」
紅蘭のその言葉は、さっきの俺の考えを裏切っていた。
「紅蘭、まがりきれるって解ってたんじゃ・・・。」
「そんなわけあるかいな!あんなカーブあんなスピードで曲がるわけないやんか、ウチは常日頃から安全運転心がけとるんやからな。」
内心、嘘だ!、とは思いながらも俺は同意しておいた。
「そ、そうだね・・・。」
「ところで大神はん、あんたいつまでウチに抱きついとるつもりや。」
そういえば俺はあの曲がり角から、その姿勢のままだった。
「いや転んだ時に備えて紅蘭を守ろうと思ってだね・・・、あの・・・。」
慌てて俺は紅蘭から手を放した。
紅蘭はそっぽを向いて、怒った口調で言った。
「そらどうもありがとさん。そやけどウチもうら若き乙女なんやからな、
いつまでも抱きついてるやなんて失礼やないか?」
「ご、ごめん。」
「そんなことゆうといて、
ホンマはウチに抱きつこう思うて後ろ向かせたんちゃうんか〜。」
「そんなわけないだろ!」
紅蘭は俺の大声に驚いてこちらを向いたが、俺はかまわず続けた。
「いくら紅蘭に抱きつきたいからといってわざと俺があんなことをすると思うか?!
俺達もう少しで死ぬところだったんだぞ!俺が、紅蘭を、好きこのんでそんな危険な目にあわせるはずがないだろう!」
見ると紅蘭は目に涙を浮かべていた。
「紅蘭・・・。」
紅蘭だって本気であんなこと言った訳じゃないだろう、俺は少し後悔した。
「大神はん・・・、そんなに怒らんといてぇや、ウチそんなつもりでゆうたんちゃうんや。」
「ウチさっきのカーブのことで気ぃたってて、それでな、・・あのな・・ウチ、
その・・。」
泣きそうになって、しどろもどろになっている紅蘭を俺は、今度は
そっと優しく抱きしめた。
「・・・・・・・・!!」
「俺は怒っちゃいないよ、紅蘭。少し言い過ぎた、すまない。」
「ううん、ウチの方こそ言い過ぎやったんや。ごめん・・・、ごめんなさい大神はん。」
「ほら、もう泣かなくてもいいんだよ。」そう言って俺は紅蘭の目元を拭ってやった。
「ちゃうんや、ウチ、うれしゅうて泣いてるんや。大神はんがウチのことそんなに大切や、思うてくれたはるなんて・・・。」
「紅蘭・・・・・・。」
長い間、俺達は抱き合ったまま、海岸に押し寄せる波の音に包まれていた。
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