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投稿者:
HRK @ prxA1.kyoto-inet.or.jp on 97/11/19 16:16:15
「ひぃやあぁっほうぅぅぅ〜!」
紅蘭の声が辺りにこだまする。
まだ夏の日差しが残る海岸沿いの道を、砂煙を巻き上げて蒸気バイクが疾走する。
紅蘭は久しぶりに蒸気バイクを走らせることができて、かなり上機嫌のようだ。
俺はというと蒸気バイクのあまりの速さに紅蘭にしがみついているのがやっとで、声を出すことさえ出来ない。
「なあ大神はん、今日はウチの蒸気バイクに乗れて良かったやろ!
ほら、見てみぃや、海がごっつぅキレイやで!」
紅蘭は聞こえるように大声で叫んでいるのだろうが俺はそれに答えることが出来ない。
こっちは息もつまりそうでそれどころでは、ない。
やがて不審に思ったのか、紅蘭は後ろを振り向いて「大神はん!大神はん、どうしはったんや。」、と尋ねてきた。
だから声が出せないんだってと思って紅蘭の方へ頭を上げると、目前に急な曲がり角があるのが俺の目に飛び込んできた。
「こ・・こう・・らん、・ま・・え・・・!」
俺は息がつまりながらもそう言った、が、紅蘭には聞こえていない。
紅蘭は相変わらず心配そうにこちらを見ている。
曲がり角はグングン近づいている。
俺は必死に声を振り絞って叫んだ。「紅蘭!前をみろっ!」
その声は紅蘭に届いたようだが、俺はもう間に合わない、と思った。
衝撃にそなえて俺は紅蘭を守ろうと強く抱きしめた。
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