第三幕



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投稿者: ditto @ ykha083.tky.3web.ne.jp on 98/2/07 23:53:00

In Reply to: 第二幕

posted by ditto @ ykha083.tky.3web.ne.jp on 98/2/07 23:51:04

(第三幕)

−越後上杉藩・江戸屋敷−

藩主・一成(以下)「何!?裁縫を習いたいと!」
「うん、今日からでもすぐに。」
「何も裁縫など下女に任せておけば良いではないか?」
「自分でやりたいんだよ。」
正室・千寿の方(以下)「まあよろしいではございませぬか。綾もその気になっておりますし、剣や長刀に比べればよっぽど女の子らしい修業でございます。これは喜ぶべきことではありませぬか。」
「うむ、そうだな。よし、宗先生に頼んで、裁縫の先生を捜してもらうようにしよう。」まあ2,3日もすれば探せるだろう。」
「それじゃ遅いんだよ!今日から来て欲しいんだ。」
「何故そんなに急ぐ必要がある?」
「(うっ...)い、いや、じ、自分でも気の変わらないうちが良いと思ってさ。」
「ふむ、確かに綾は気が変わりやすいからな。よかろう、なんとか今日から来てくれる先生を見つけてこよう。」
「さすがは親父!恩にきるぜ!」
「親父...。」
「これ綾!その言葉遣い何とかならぬのか!」
「あっと、いけねえ。父上様、ありがとうございます。」
「...(やれやれ)」


(翌日・晴れ)
「姫!外はいい天気ですぞ、そろそろ剣の稽古でも。」
「今忙しいのじゃ。爺や、一人でやっておれ!」
「な、なんと?...」

(翌々日・快晴)
「姫!今日もいい天気でございます。屋敷の中に籠もっていないで、たまには外で体を動かさねば鈍ってしまいますぞ。」
「わらわのことなら心配無用じゃ。爺は一人で遊んでおれ!」
「(シュン)寂しい...。」

(翌々々日・曇)
「ほれ、ご覧なされ姫!姫の大好物のあんみつでございます。爺と一緒に食しましょうぞ。」
「それはどちらかというと爺の好物ではないのか?わらわの分まで食べて良いぞ。」
「...姫、先日から一生懸命一体何を編んでおられるのですかな?」
「これ!見るでない!」
「...この爺に隠し事とは!?小さい頃からずっと姫のお世話をしてきたこの爺に!悲しい...。」

(四日後・雨)
「抜き足、差し足、忍び足...(背後から綾に忍び寄る塚原)」
「(爺の行動をチラッと横目で見る)」
隙ありぃ!
バシッ!
「な、なんと!?わが剣を鍋蓋で受け止めるとは!お見逸れいたしたでござる。」
「爺!何故わらわの邪魔をするのじゃ。」
「だって、最近姫が構ってくれないから…T^T」
「...」

(五日後・晴れ)
「爺、ちと出かけて来るぞ。」
「お待ち下され。爺もご一緒いたしまする。」
「爺は留守番じゃ!」
「あう、なんてこったい...。」




−八丁堀・町医者 朗(さえ)の診療所−

「確かこの辺りに、う...すごい埃...。」
何やら押入の中で捜し物をしていた彼女は、積まれた荷物の下の方から風呂敷で包まれた小箱を抜き出していた。
「これだわ。」
小箱の蓋を開けると、中には小さなお守りのような物が収められていた。朗は少し震える手でそれを取り出し、じっと見つめていた。その時の彼女の表情は、何か物憂げに見えたのだが...。

「お朗ぇ〜、いるかい?」
「(はっ!)」
彼女は金治が来たことに気付くと、少し取り乱し気味に、先程までに手にしていた物をそそくさと片づけ始めた。
「いねえのかい?」
「お待たせ...。」
「おう!...あまり元気がねえようだな。無理もねえ、あんなことがあったんだからな。」
「う...うん。」
「なあ、お朗。無理することはねえ。お前が行かなくたって、俺達でなんとかしてやる。だから気にするな。それに奉行所じゃあ今度の件でおまえを...。」
「金さん...それ以上は言わない方が良いんじゃない?なりは町人でも、金さんは御奉行様なんだから、そんなこと漏らしちゃ立場がまずくなるわ。...ああ、あたしのことならね、大丈夫よ。...でもちょっとだけ...落ち込んじゃった...。」
「お朗...」
「このサターン町には500万からの人間がいるわ。それなのに、あたしが今まで助けることができたのは、ほんの僅か...一握りの人たちだけ。大部分の人たちは、あたしとは何の関わりもないの。...なのに、あたしのせいでそんな人たちまで巻き込んでいるかと思うとやるせなくて...。」
「血祭組の無差別殺人予告のことかい!?あれはおまえのせいじゃねえ!悪いのは奴らだ。」
「わかってる...わかってるんだけど...ちょっとだけ...。ごめんね、変な心配をかけちゃったようね。」
「なあ、みんなのとこへ行こうじゃねえか。きっと元気がでらあな。」
「そうね。落ち込んでばかりもいられないし。行きましょうか。」
「そうこなくちゃな。やっぱり元気な朗が一番だよ。」